極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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 一瞬、場の温度に凍った冷気が差し込むほどのバリトンボイスに、さすがの参謀もピタリと動きをとめる。何よりその男の額から頬にかけて刃物で食らったと思われる大きな古傷があり、鋭い視線と相まってより一層凄みを感じさせるのだ。このままやり合ったところで勝ち目はないと本能がそう告げる。
 だが、本当に引き下がっては面目丸潰れだ。アジトに帰って頭に何と言い訳したらよいかと思うと、おめおめと譲るわけにはいかないというのもまた確かなのだ。
「ふ、ふざけるな! 茶屋に来たのは俺の方が先だ! てめえこそとっとと失せやがれ!」
 啖呵を切ったものの、丹羽も連れの男もまるで動じない。あわや一触即発というその時、またしても後ろから別の客がやって来て茶屋前はあわや三すくみ状態の戦々恐々と相成った。
「何だ、揉め事か?」
 参戦者はこれまたえらく男前で長身の大男だが、髪には白髪が混じった中年である。咥え煙草が似合っていて、少し着崩した着物姿もサマになっている。
「クソッ! また厄介者が増えやがったか……。てめえも花魁目当てだってか? だが今は取り込み中だ! 見て分からねえか!」
 参謀の男が威勢よく怒鳴り上げたが、実のところ新たな客の登場で内心ホッとしたのも事実のようだ。このまま頬に傷のある男と一対一でやり合うのは確実に武が悪いと思っていただけに、参戦者が増えればそれを回避できるからだ。参謀にとってはまさに天の助けといったところのようだった。
 すると白髪混じりの男は落ち着き払いながら冷笑してみせた。
「俺の目当ては花魁じゃねえ。ここにはえらく腕のいい壺振りがいるっていうじゃねえか。そいつと一勝負交えたいと思ってやって来たんだが」
 どうやら目当ては賭場の方らしい。すると頬に傷のある男が企みめいた笑みと共に意外なことを口にした。
「ほう? 貴様は壺振りが目当てかい。だったらこういうのはどうだ。俺とそこの男は花魁を所望だが、ここはひとつ三人で勝負といかねえか? 花魁を賭けてここの賭場でカタをつけようじゃねえか」
 それなら誰も文句はあるまいと得意顔だ。
「ふむ、面白え。一人で博打ってのも味気ねえし、俺は構わんが? まあ、俺は賭場を楽しめりゃいいんで、勝負に勝ったところで花魁遊びは御免被るがな」
 傷持ちの男と白髪の男ですっかり意気投合してしまっている。参謀の男も首を縦に振るしかなかった。
 そんなことでとりあえず場が収まってくれたので、主人はホッと胸を撫で下ろす。奇妙な成り行きだが、丹羽を含めた四人の客たちを案内して花魁が待つ座敷へと向かったのだった。
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