極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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 四人が姿を現すと、賭場で待っていた冰と中盆役の源次郎が驚いたような顔つきで迎え入れた。一度に四人もの客が来るというのもむろんだが、驚いた理由はそれだけではない。
 すると、その後方の座敷で優雅に座っていた花魁の紫月までもが嬉しそうに雅な声を上げてみせた。
「おや! 今宵は随分と男前さん揃いでいらっしゃいますなぁ。ようこそおいでなんし」
 紫月は相も変わらずヒラヒラと扇を仰ぎながら賭場までやって来ると、頬に傷のある男の目の前まで来てそっとその傷に白魚のような手を添えてみせた。
「主さん、これはまた! いっそう男前を上げる勲章でありんすねぇ。きっといろいろな意味でお強いのでしょう」
 まるで『あちら――色――の方も期待できそうですね』と、さすがにそうは口にしないながらも、どうぞ賭場を破って今宵は私を手に入れてねとでも言いたげである。
 そうされて頬傷の男も機嫌の良さそうに口角を上げてみせた。
「今日は俺の”誕生日”なんでな。てめえで日頃の労をねぎらうってのは粋に欠けるが、たまにはそれもいいだろうと思ってな。自身への褒美にと噂の花魁殿に会いにやって来たってわけだ。運良くお前さんを手に入れた暁には期待以上に悦ばせてやれる自信はあるぜ」
 男は花魁の手を取ると紳士の素振りで軽く口づけながら、チラリと壺振り師へと視線をやった。
「おや、主さんの”お誕生日”でありんすか? それはそれは! 縁起の良いことでありんすなぁ」
 そっと握られた手を撫でながら、こちらも壺振りに向かってニコッと微笑む。
 その様子を見ていた白髪混じりの男はクスッと微笑するに留めたが、参謀の男は「チッ!」と苦々しい舌打ちと共に嫌味を吐き捨てた。
「はん! 花魁様はこの傷野郎がお好みと見える。……ったく、客を品定めするなんざ失礼な茶屋もあったもんだな! だが今夜の相手を選ぼうったってそうはいかねえぜ? 賭場で勝ちゃ、俺がお前さんをいただくからな。覚悟しやがれ!」
 しょっぱなから何とも品のない言い草である。だが紫月は「もちろん!」と言って優雅に微笑んだ。
「どちらの主さんも男前でワクワクしておりんすよ。どなたが勝っても今宵はこの”紅椿”が最高のおもてなしで主さんたちを悦ばせて差し上げましょう。どちら様もどうぞがんばっておくれなんし」
 そう言うと、一歩下がって勝負を観戦すべく火鉢の側に腰を下ろして自ら煙管に火を点した。
 花魁が人前で煙管を燻らすということは、それを受け取った者が彼を手中にしてもいいという暗黙の合図のようなものだ。つまり、この四人の中に煙管を差し出したい相手がいるということになる。
「さ、”紅龍”や。早いところ始めておくれ」
 壺振り役の冰に向かって優雅に微笑みながら、ふうと色気たっぷりに煙を吐き出しては妖艶に笑う。これを見ただけで既に欲情させられてしまうほどに道にいった仕草といえた。
 さて、花魁からの催促を受けていよいよ壺振り紅龍の白魚のような手が空を舞う。
「どちら様もようござんすか? さあ、張った張った!」
 中盆源次郎の掛け声を合図に四人の男たちがそれぞれ思ったところに賭けていくこととなった。一等最初に動いたのは参謀の男である。
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