極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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 そうこうしている内に田辺を訪ねて来た女を尾行していた春日野が戻って来た。
「姐さん! ご容態は……」
 いつも通りの花魁姿でいる紫月を目にして、すぐさま気に掛けた。
「お陰様でこの通り無事だ。俺は少し強めの睡眠薬を食らっただけのようだからな。それより守備はどうだ」
 春日野はホッと胸を撫で下ろしつつも、すぐに見聞きしてきたことを報告してよこした。
「あの女は敵からの伝達役で間違いありません。若を拐ったことで今夜からの三浦屋の様子をより詳しく探るようにと伝えに来たようです。敵の話では我々が三浦屋の雇った剣客だと疑っているようで、花魁がどのように接客をしているのかを覗き見てくるようにと田辺へ指令を出したようです。おそらく今夜は田辺がこの座敷へ忍び込んでくると思われます」
 要は花魁が本当に客と寝ているのかどうかなどをその目で探って来いと言われたようだ。
「ってことは、今夜寝静まった頃に田辺ってヤツがここを覗きに来るってわけだな? 実際に床の相手をしている現場をカモフラージュせにゃならんということか」
 紫月が苦笑している。
「今宵の客は親父と綾さんが来てくれるらしいから助かったと言えるが……親父と組んず解れつをやれってか? どうせなら綾さんが相手になってくれた方がやり易いんだがな」
 それこそ鐘崎が知ったら眉をしかめるに違いない。その姿を想像しながら、紫月はクスクスと可笑そうに笑うのだった。
「ん、だが案外いい手ではあるな……。こいつぁ……遼の記憶を取り戻させるのに使えるかも知れねえ」
 閃いたとばかりに紫月はパシッと扇で膝を叩いてみせた。
「遼のことだ。俺が他所の男とよろしくやってるところを見れば、案外ショック療法で記憶が戻るかも知れねえな」
 確かに鐘崎の紫月に対する独占欲は人一倍強い。そこをくすぐれば、記憶以前に本能を揺さぶれるかも知れないと思うのだ。
「よし、とりあえず今夜は親父とエロ芝居を打って田辺ってヤツを納得させよう。俺たちが剣客ではなく単なる男娼として三浦屋に入ったことを確認させてから、丹羽さんと武器庫に保管されているブツを秘密裏に運び出す算段に移ろう。武器庫が空になった時点で一等派手な花魁道中をぶち上げるぜ!」
 紫月曰く、街の端から端までを練り歩く大掛かりな花魁道中を催して、その姿を鐘崎に見せつけようというのだ。鐘崎の本能に火を点けることができれば、或いは自我を取り戻せるかも知れない。
「問題は俺を手に入れる相手役が必要だが……遼がいっちゃんヤキモチを焼きそうな相手がいいな。さすがに俺ン親父じゃ役者不足かも知れねえ」
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