極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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「それまでに守備良く武器庫の荷を外界へ運び出せれば言うことなしだ。源さん、手順はどうする」
 今までの朗らかな雰囲気から一転、至極真面目な顔つきで紫月が訊く。まさに男の仕事の顔つきといえた。
「はい。丹羽君の話では食材などを運び入れる業者の荷車の中に少しずつブツを紛れ込ませて、数日に渡って徐々に武器庫を空にしていく方法を考えているとか。それと同時に桃の節句の飾り付けと称して大工を装った組の若い衆たちを街の各所に配置するのも手ですな。街が賑わえば敵の目をそらすのに役立ちましょう」
 荷車に積んだ武器を人の手から手へと順繰りに渡して運び出すにもちょうどいい。
「人海戦術か。それでいこう! その前に武器庫に忍び込む算段だ。当然敵の見張りが張り付いているだろうが、そっちはどうだ」
 それについては周が僚一から聞いてきた状況を報告した。
「見張りを片付けるのは案外容易いとのことだった。現に僚一は昨晩武器庫に忍び込んでいる。見張りは若い男が二人ほどいたらしいが、まさか襲って来る奴もいねえと高を括っているようで、ただ上から言われた通り、持ち場についているだけのようだ」
 それを受けて源次郎がいい案があると口にした。
「でしたらうちの組の若い者を倫周さんにメイクしていただいて、その二人を捕らえて入れ替わるというのは如何でしょう」
 そうすれば表向きは何事もなく映るし、見張りが立っていればまさか武器庫が襲われているとは敵も思うまい。
「そいつは名案だ! 俺たちはいつも通りに営業を続けながら、田辺ってヤツをはじめ敵の目を引きつけておくとしよう」
 大まかな手順が決まったところで、そろそろこの街が客で賑わう頃合いとなった。源次郎の護衛付きで倫周は僚一に傷のメイクを施すべく敵陣へ向かうことにする。その直前に丹羽が紫月の父親の飛燕と綾乃木を連れてやって来たので、準備は万端だ。同時に李が業者を装って皆の弁当を持って訪ねて来た。
「よっしゃ! 冰君、今宵もいっちょ雅に賭場と座敷に取り掛かるとするか!」
「はい! 頑張りましょう!」
 紫月に言われて、冰も元気良くうなずいてみせた。
 いよいよ見方も出揃って、ここからが腕の見せ所である。紫月は粋な仕草で着物の裾を叩いて立ち上がると、皆を見渡しながら言った。
「この街が本来の由緒ある花街を取り戻せるよう踏ん張り処になるが、ここは全員一丸となってやり切るぞ。伊三郎の親父にも約束したことだし、是が非でも街を取り戻す! 夢と誇りを持った義理人情の厚い善人に喧嘩を売った落とし前、きっちりつけさしてもらう。この三千世界に極道の華――派手に咲かせてやろうじゃねえか」
 バッと勢いよく扇を開いて笑む花魁紅椿の掛け声が雅な座敷に幸先よく轟いた。悠然たるその姿は、まさに皆の希望を背負って雄々しく咲き誇る大輪の花の如くであった。



◇    ◇    ◇



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