極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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「……ッ! てめ、いきなし来んなバカッ!」
「バカとはご挨拶だな。失礼な花魁もあったもんだ! いいから観念して素直になりな。おめえさんが味わったことのねえくらいイイ気分にさせてやっから!」
「……って、おい! こ……ンのエロジジィ!」
 本能でか、ついドカッと膝蹴りを繰り出す。
「おお、おお、威勢のいいこった。それがてめえの手管だってか? なかなかに萌える趣向じゃねえか」
「……っそ、萌えるとか……いい歳こいてっくせに、マジで気色ィし!」
「さすがに噂通りの跳ねっ返りだ。俺りゃーなぁ、そういう気の強えのを見てると最高に滾るタイプなんだわ!」
「……滾るとか……マジでキショッ! 他にもうちょい言い方ねえのかよ! つか、本気でムリ!」
 ひそめ気味とはいえ外で聴いている者からすれば、くぐもった声のやり取りはちょうどいい具合に嬌声と受け取れなくもない。布団の中でジタバタとし、ハタから見れば確かに組んず解れつ状態である。
 田辺は襖の間からそれを窺いながら、どうやら納得している様子でいる。その気配を感じたわけか、飛燕が小声で紫月の耳元に囁いた。
「ほれ、あと一押しだ! ダダこねてねえで、一際でっけえエロ声上げてみやがれ!」
「……ンなこと言ったって……ンあー……ッ!」
 いつまでも恥ずかしがってなかなか演技に集中できないでいる我が子に、極めつけか飛燕は息子の雄をキュッと擦り上げてみせた。
「うあ……ッ! ちょ……待て待て待て……ッあっく」
 案の定驚いた紫月が掠れ声のおまけ付きで大きな嬌声を連発する。しばらくすると田辺と思しき気配が足早に階下へと降りていったようだった。
 それを確認したと同時にバッと掛け布団を押し退けて紫月が床の上で跳ね起きる。
「……ンの、クソ親父ー! よくもやりたい放題してくれやがったな!」
「やりたい放題とはご挨拶だな。お陰で敵も信じ込んでくれたろうが」
 飛燕の方は余裕綽々である。
「つかよ……いつまで俺ン大事なイチモツ握ってんだ! いい加減離しやがれ……このエロヘンタイー!」
 未だ息子の息子を掴んだままでいることに気付いて、飛燕が「ああ」と空っとぼけてみせた。
「おお、悪ィ悪ィ。しかしおめえも立派になりやがったなぁ。赤ん坊の頃はこーんなに小ちゃくて可愛らしかったもんだが」
 飛燕がイチモツを指差しながら感心顔でいる。
「アホか! 赤ん坊んチンコと比べるって……頭おかしいんじゃねえか、おい!」
「だが本当に可愛いモンだったぞ? おめえは覚えておらんだろうが、今は亡き母さんなんかソイツをチュウチュウ舐めてたこともあったなぁ」
「……ッ!? ンギャアーッ! それ以上言うな! な、な、な……何アホなこと言って……」
「照れるこたぁねえ。我が子に対する最高の愛情表現ってやつだろ。大概はどこの親も一度くれえは――」
「ぐわー! それ以上言うなってのー! つか、てめ……! ちったー道徳心っつか……羞恥心ってモンがねえのか、ったくよぉ……」
 何ともくだらない言い合いをしていると、襖の陰から鈴なりになってこちらを覗いている視線に気が付いて、紫月は大口を開けたまま蒼白顔で目を白黒とさせてしまった。なんと源次郎以下全員が座敷の様子を気に掛けて見物にやって来ていたのだ。
「ゲ……ッ!? 皆んな……まさかずっと見てたってか?」
 あわあわと蒼白の紫月に対して飛燕は可笑そうに笑っている。
「皆んなも気に掛けて見守ってくれてたんだろう。有り難えことだ」
「くぁー……こっ恥ずかしいったらねえぜ……一生の不覚だ、こりゃあ!」
 参ったとばかりに額に手をやって落ち込む紫月のゼスチャーに、またしても皆からドッと笑いが起こって、座敷内は朗らかな笑みであふれていったのだった。
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