極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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 その三浦屋の方ではちょうど冰の賭場で盛り上がっている最中であった。客は紫月の父親と綾乃木だが、スパイの田辺を出し抜く為に一通りの手順を踏んでいるわけだ。
 中盆役は源次郎に代わって春日野が務めていたのだが、彼も任侠一家に育っただけあって、丁半の定まりは熟知しているようだ。なかなかに板についた仕事ぶりに、僚一ではないが世代交代した先の未来を想像しては頼もしい思いが込み上げて、喜びを噛み締める源次郎であった。
 その後、田辺が従来の仕事に就いていることを確認した上で、飛燕と綾乃木にも今後の動きを伝えながらの夕食タイムと相成った。紫月と床を共にする作戦を打ち明けたところ、飛燕は面白がって鷹揚に笑った。
「紫月がガキの頃はずっと一緒に寝てたわけだからな。久々に懐かしさに浸るのも悪くねえ」
 暢気な父親に呆れながらも、紫月はクイと肩をすくめたゼスチャーでおどけてみせる。
「っつっても一応はエロい関係をでっち上げなきゃなんねえわけだから。さすがに親父相手によがるのも骨が折れる話だぜ」
「なに、お前は覚えてねえかも知れんが、赤ん坊の時分は俺のオッパイに吸い付いて離れなかったんだ。今更照れる必要はねえ」
「はぁッ!? そりゃ本能で母ちゃんの乳と間違えてたってだけの話だろ? ンな大昔のことを言われてもなぁ」
 紫月は紫月で三白眼を剥きながら照れ隠しの為か口を尖らせている。
「だったらアレだな。僚一とポジションを変わりゃ良かったか? おめえさんも僚一が相手なら俺よりはドキドキできるかも知れねえぞ?」
 ニヤニヤとしながら飛燕は意地悪く笑う。
「はッ!? 洒落ンなんねえ冗談言ってる場合かよ……! 親父……てめ、面白がってンな?」
「なに、満更でもねえだろうが。僚一と遼二坊はツラもよく似てるからなぁ。年かさがいっている分、テクも遼二坊よりは上手えかも知れんぞ?」
 冗談だとは分かっていても、この父親の暢気さ加減には呆れるばかりである。だが、これも鐘崎のことで心を痛めているだろう息子に対して、少しでも気を紛らわせて元気付けてくれようとしている飛燕の心遣いである。紫月もそれをよく分かっているから、内心では有り難く思っているわけだ。
「……ったく! 舅との不義を勧めるってよぉ……これが実の父親の言うことかね?」
 そんな親子の掛け合いに、皆からもドッと笑いが巻き起こる。紫月も飛燕もつられるようにして座敷内には明るい笑い声であふれていったのだった。

 深夜になって皆がプライベートルームへと引き上げると、いよいよ敵の田辺が様子を探りにやって来る頃合である。紫月と飛燕は花魁の座敷で雅な布団に包まりながら、じっと偵察の時を待っていた。
 階下から忍び足で近付いてくる気配を感じ、二人共に互いを見合わせる。
「来やがったな。よし、そろそろ始めるか」
「お、おぅ……」
 言うが早いか、いきなり父親に組み敷かれて紫月はギョッと眉をしかめてしまった。
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