極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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 例えまたすぐに会えると分かってはいても別れが名残惜しい。倫周の言葉ではないが、だがまあとにかくはそれぞれの家へ帰って英気を養わなければならない。鐘崎家と周家へ向かって車が走り出すと、その車中で父親の僚一に話し掛けたのは鐘崎であった。
「――良かったのか?」
 主語も何もなく突如投げ掛けられて、僚一は怪訝そうに首を傾げてみせた。
「何がだ」
「あのまま残して来ちまって良かったのかって訊いてんだ」

 本当は連れて来たかったんじゃないのか?

 言わずとも息子の目がそう語っているのに気付いてか、僚一はふいと不敵に口角を上げてみせた。
「ガキがマセたことを抜かしてんじゃねえ。何を勘違いしてやがるか知らんが、そいつぁ余計な詮索ってモンだぜ?」
「そうかな」
「そうだ」
 二人だけで納得しているようなやり取りに紫月が不思議顔で覗き込む。鐘崎曰く本当は蓉子を連れて帰りたかったのではないかと、そう訊いたわけだ。鐘崎自身も蓉子にはたいそう世話になった。彼女が親身になって介抱してくれたお陰で体力が快復したのは明らかな事実である。先程も別れを名残惜しそうにしていた彼女の様子を遠くから見ていて、もしかすると父の僚一も同じような心持ちでいるのではないかと思ったのだ。
「なぁ親父。今回は俺の油断でえらく世話を掛けちまったから……偉そうなことを言えた身分じゃねえのは分かってるし、まだまだ未熟だってのも充分理解してはいるが……。俺も三十路を迎えたことだし、この先もっともっと精進しようと思ってる。だからもし親父が仕事だけじゃなく他に大切にしてえものがあるってんなら……」

 組のことは俺も今まで以上に責任を持ってやっていくつもりだし、自分の幸せの為の時間を持ってくれてもいいんじゃねえかと思ってる。

 最後まで言葉にはしなかったものの、息子がそう言いたげにしているのは充分に伝わったようだ。要は仕事一筋ばかりじゃなく、組のことは一緒に背負っていくから自分自身の幸せを考えて欲しいと思っているのだろう。例えば心惹かれる相手ができたなら自分たちに遠慮することなく、その想いを大切にしてくれと、息子の視線がそう訴えているのが僚一には痛いほど分かった。
 そんなふうに思いやってくれる迄に成長した彼を誇らしく思う気持ちに代えて僚一はがっしりとその肩に腕を回しては笑った。
「大人になったな遼二。そんなお前を見られて頼もしい限りだが――もしもそういう縁があった時は正直に打ち明けるさ。だが今回のことでは気遣いは無用だ」
「親父……」
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