極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

98(三千世界に極道の華 完結)

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「うーん、やっぱ毎日一緒にいたからなぁ。ああやって自分ちに帰っちまうのを見てるとちっと寂しい気がすんなぁ」
 門を出て行く車を目で追いながら紫月がそんなことを口走る。
「だったらアレだ。将来は皆んなで住める共同住宅でも造るか!」
 僚一が壮大な計画を口にすれば、皆は半ば呆れつつも興味津々で瞳を輝かせた。
「共同住宅って親父なぁ。けどまあ、それもアリか。でっけえマンションが必要になりそうだが」
 息子の鐘崎が笑っている。
「いんや! 御殿だ。痒いところに手が届くでっけえ御殿を建ててやろうじゃねえか!」
 将来の新たな夢ができたとばかりに僚一は案外真剣に大乗り気でいる。今現在でも相当に広い事務所と言えるが、僚一の構想は果てしないようだ。
「うわぁ! いいなぁ。僕らも是非混ぜていただきたいですよー! ねえレイちゃん?」
 倫周が羨ましそうに言えば、レイも「当然だ!」と言って不敵に笑う。
「俺らは事務所と通信機器さえあればいい。あー、だが衣装部屋も必要だな。それに移動用に衣装箱を乗せられるでっけえ車もいるわな! そうそう、それからファッションショー用のウォーキングの為のレッスン場も必須っちゃ必須だ」
 最初の話からどんどん要求が増えていくレイに、息子の倫周はまたまた眉を吊り上げる。
「もう! レイちゃんったらホントどこまで図々しいのよー! そんな我が侭ばっかり言ってると仲間になんか入れてもらえなくなるんだからねー」
 相も変わらずポンポンと遠慮のない言い合いを繰り出すヒイラギ親子に皆で笑いを誘われる。当のレイは息子の小言など右から左といった調子でワクワク顔でいる。
「頼むぞ僚一! 期待してっからなー! もちろん資金面では俺もガッツリ協力させてもらうぜ!」
 ガッシリと僚一の肩を抱いたレイに、僚一もまたガッツポーズで応えてみせた。
「おお、そいつは頼もしいな! うちの組事務所に飛燕の道場、レイのモデル事務所と衣装部屋に全面鏡貼りのレッスン場だって造ってやらぁな! それに焔のところの業務もできる設備が必要だな。あそこは商社だからそれこそでっけえ倉庫が必要だろう。あとは娯楽施設に医療設備は必須だろ? 老後も踏まえて他にも必要なモンがたくさんあるだろうしな。それに皆の住居だ! こいつぁ計画のし甲斐があるぞー」
 すっかり本気で夢を描き始めた僚一に、鐘崎と紫月以下皆は半ば呆れつつも、本当に現実となったら――と考えるだけでも楽しいわけか、ワクワクと表情を輝かせた。
「すっげ壮大な計画じゃん! けど実現したらそりゃーいいだろうなぁ! つーかさ、それこそ伊三郎の親父ンとこみてえに街が必要になりそうじゃん」
「確かにな。だがまあ皆で一つ所に固まっていりゃ、仕事もはかどりそうだな」
 息子夫婦にも期待顔をされて、僚一は頼もしげに腕まくりをし、力拳を披露してみせた。
「もちろん夢ってのは実現させる為にあるんだからな。よし! 次の目標は共同一大御殿、いや街の建設だ。この際、城壁で囲んで本当の街にしちまうのもいいか」
「おいおい……だんだん現実離れしてきやがったぜ」
「いーや、俺はできねえ夢は描かねえぞー。なんせ人生百歳時代だからな! まだまだ半分も残ってんだ! やってやれねえことはねえ」
 大きな伸びをしながら意気込みを見せる組の長・僚一を囲みながら、和やかな笑顔に包まれた春の宵が更けていく。東の空を見れば上がったばかりの大きな朧月が春霞の中、それは見事な輝きを放っていた。
 突然の拉致から始まった騒動だったが、一風変わった江戸吉原の世界も味わえた上に無法者たちによって占拠された街の解放まで成し遂げることができた。それもこれもいつも一緒にいるこの面々たちとの絆と信頼があってこそだ。苦難もあったが互いを思い合う気持ちで乗り切って、結果は大団円といえよう。
 新たな夢に向かってより一層団結する一同を春宵が包み込む、そんな賑やかで幸せな時間がゆっくりと過ぎていったのだった。

三千世界に極道の華 - FIN -
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