極道恋事情

一園木蓮

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孤高のマフィア

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 結局何の目的も果たせないまま博多へ戻るしかなかった。カフェを転々としながら周の社屋の近辺で丸一日を過ごしたものの、再び彼に会うことは叶わず、見掛けることすらないままに諦めて帰るしか選択肢はない。重い気持ちのまま舞い戻れば、また新たな週が始まって何の変哲もない日常が戻ってくる。香山はそんな現実から逃れるように酒に溺れるようになっていった。

 それはある日の夜のことだ。同業者の懇親会がらみで飲みに行った先のクラブで、この日も深酒に身を委ねていた。ウトウトとしかかっていると係についたホステスだろうか、宥めるように隣から声を掛けられて香山は重たい目を開いた。
「香山ちゃん、大丈夫ぅ? お連れさんは皆さん帰っちゃったわよ。今夜はもうそのくらいにしておいたら?」
 ふと虚ろな視線をやれば、女は幾度か接したことのある見知った顔のホステスであった。目の前に水の入ったグラスを差し出しながら笑っている。周りを見渡せば一緒に来たはずの面々たちは既におらず、確かに一人取り残されていることに気が付いた。
「はん! どいつもこいつも薄情なヤツらばっかりだ」
「そんなことないわよぉ。皆さん心配してらしたわよ。お店もそろそろ閉店なの」
「ふん……あんたも薄情だ」
「まあ失礼しちゃうわ! 何か嫌なことでもあったのー?」
「嫌なことだらけさ」
「しょうがない人ねぇ。じゃ、特別! ホントは閉店だけどもうちょっとだけ付き合ってあげる。何があったのか全部話してスッキリしちゃいなさいよ!」
「は! 随分とやさしいじゃねえかよー」
「ふふふ、今頃気付いたのー? 遠慮しないでいいから何でも言って! そんなに深酒しちゃうくらい嫌なことがあったのね?」
「ああ……最ッ低のことがな」
 すっかり酔いも回っていた香山は、女の言葉に乗せられるようにして思っていることをぶちまけた。
「フられたんだ……。ずーっと前から好きだった人によー。しかも相手があんなクソガキだなんて……!」
「あらぁ。あなたのようなイイ男を振るなんて見る目がない女ねぇ。あなたなら他にいくらでも素敵な女性がいるわよ。そんな女、こっちから願い下げちゃえばいいわ」
 客商売とは分かっていても、こんなふうに言われれば気持ちが楽になるのは確かだった。香山は女にの言葉に甘えるように好きになった相手が女性ではなく男性だということや、彼がいつかは素敵な女といい仲になることを間近で見るのが辛くて身を引いたにもかかわらず、彼の現在付き合っている恋人らしい相手が男性であるだろうことなどを洗いざらい打ち明けてしまったのだった。
 そして酔いに任せてついつい相手の素性まで口走ってしまう。
「まさか氷川さんがあんなガキを相手にするなんて思ってもみなかった……! こんなことなら諦めずにあの人の側に居ればよかったと思うと後悔しかねえよ……!」
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