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孤高のマフィア
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「まあ落ち着けって! バレたところで全部あの香山ってヤツのせいにすりゃいいだけだ。俺たちは関係ねえとシラを切り通しゃいいのさ!」
「そんな暢気にしてる場合じゃないってのに……!」
だが、確かに男の言うことも一理ある。すべてを香山のせいにすれば自分たちに災難は降り掛からないだろうか。いずれにせよ既に拉致してきてしまった今となっては、悔やんでもどうにもならない。愛莉はハラハラとしながらも、とにもかくにもこの二人をさっさと香山に引き渡してよねと念押しするのだった。
そうして一行が博多へと着いたのは、次の日の昼頃だった。どうやら冰の方がしっかりと薬を食らってしまったらしく、焦燥感いっぱいの里恵子に揺り起こされてようやく意識を取り戻したというところだった。
「里……恵子ママさん?」
「冰ちゃん! 良かった、気がついたのね!」
「ええ……あの……」
二人が連れ込まれたのは狭く薄暗い部屋で、古ぼけたソファやらテーブルやらが雑多に詰め込まれていて、ビール瓶などをストックする箱なども散らばって埃を被っている所だった。窓もなく、壁やカーテンなどの装飾から察するに、以前はバーかクラブだったようだ。扉の隙間から漏れる陽の光で、今が昼間なのだということが分かる程度である。二人はそのソファの上に寝転がされていたらしい。
「ここ……何処ですか? 俺たちはいったい……」
意識がはっきりしてくるごとに昨夜の化粧室で起こったことが頭の隅に蘇ってくる。
「そういえば……昨夜、手を洗いに行って……そのまま誰かに羽交い締めにされたような……」
「そう……。相手は男が三人だったと思うわ。アタシが追い掛けて行った時にはもう冰ちゃんは意識を失ってて、助けを呼ぶ間もなくアタシもあっという間に捕まっちゃったのよ」
「……! 思い出しました……。じゃあ俺たちはあのまま……。捕まったのは俺とママさんだけということでしょうか」
「分からないけど、アタシが気がついた時には冰ちゃんと二人きりだったわ。周さんや鐘崎さんたちももしかしたら別の部屋とかで同じような目に遭っているのかも知れないけど、見当たらないわね」
「……そうですか」
いずれにしても緊急事態に変わりはないだろう。こんな目に遭う心当たりはないものの、周も鐘崎も裏社会に生きる人間である。本人たちはもちろんのこと、家族である自分がいつどんな目的でこうした拉致などに遭ったとしてもおかしくはないという覚悟は常に意識している冰であった。
「とにかく相手の出方を待つしかないでしょうか。もしも拉致されたのが俺とママさんだけとしたら、白龍たちは俺たちがいなくなったことに気付いてくれているはずです」
冰は咄嗟に自分の腕時計を確認した。GPSを辿ってくれれば案外すぐに助けが来るだろうと思ったからである。だが、肝心のそれを身に付けていないことに気付くと、さすがに蒼白とならざるを得なかった。
「そんな暢気にしてる場合じゃないってのに……!」
だが、確かに男の言うことも一理ある。すべてを香山のせいにすれば自分たちに災難は降り掛からないだろうか。いずれにせよ既に拉致してきてしまった今となっては、悔やんでもどうにもならない。愛莉はハラハラとしながらも、とにもかくにもこの二人をさっさと香山に引き渡してよねと念押しするのだった。
そうして一行が博多へと着いたのは、次の日の昼頃だった。どうやら冰の方がしっかりと薬を食らってしまったらしく、焦燥感いっぱいの里恵子に揺り起こされてようやく意識を取り戻したというところだった。
「里……恵子ママさん?」
「冰ちゃん! 良かった、気がついたのね!」
「ええ……あの……」
二人が連れ込まれたのは狭く薄暗い部屋で、古ぼけたソファやらテーブルやらが雑多に詰め込まれていて、ビール瓶などをストックする箱なども散らばって埃を被っている所だった。窓もなく、壁やカーテンなどの装飾から察するに、以前はバーかクラブだったようだ。扉の隙間から漏れる陽の光で、今が昼間なのだということが分かる程度である。二人はそのソファの上に寝転がされていたらしい。
「ここ……何処ですか? 俺たちはいったい……」
意識がはっきりしてくるごとに昨夜の化粧室で起こったことが頭の隅に蘇ってくる。
「そういえば……昨夜、手を洗いに行って……そのまま誰かに羽交い締めにされたような……」
「そう……。相手は男が三人だったと思うわ。アタシが追い掛けて行った時にはもう冰ちゃんは意識を失ってて、助けを呼ぶ間もなくアタシもあっという間に捕まっちゃったのよ」
「……! 思い出しました……。じゃあ俺たちはあのまま……。捕まったのは俺とママさんだけということでしょうか」
「分からないけど、アタシが気がついた時には冰ちゃんと二人きりだったわ。周さんや鐘崎さんたちももしかしたら別の部屋とかで同じような目に遭っているのかも知れないけど、見当たらないわね」
「……そうですか」
いずれにしても緊急事態に変わりはないだろう。こんな目に遭う心当たりはないものの、周も鐘崎も裏社会に生きる人間である。本人たちはもちろんのこと、家族である自分がいつどんな目的でこうした拉致などに遭ったとしてもおかしくはないという覚悟は常に意識している冰であった。
「とにかく相手の出方を待つしかないでしょうか。もしも拉致されたのが俺とママさんだけとしたら、白龍たちは俺たちがいなくなったことに気付いてくれているはずです」
冰は咄嗟に自分の腕時計を確認した。GPSを辿ってくれれば案外すぐに助けが来るだろうと思ったからである。だが、肝心のそれを身に付けていないことに気付くと、さすがに蒼白とならざるを得なかった。
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