極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
604 / 1,212
孤高のマフィア

27

しおりを挟む
「いやぁ、悪ィね! こんなむさ苦しい所に連れ込んじまって! 気が付いたんならこっち来いよ! もうちょいマトモな部屋へ案内するからよ」
 男は馴れ馴れしい感じでニタニタと笑う。
「あなたは……どなたですか? 俺たちにどんな御用です?」
 冰が訊くと、男は関心したように肩をすくめてみせた。
「こいつぁまた! 何とも品のいい! ってよりもめちゃくちゃ男前の兄さんじゃねえの。昨夜はこっちもテンパってたんでよく分からなかったが、とんだ上玉だ」
 どうやら危害を加える様子は見られないようだ。冰はもう少し突っ込んで理由を訊ねることにした。
「お目に掛かるのは初めてですよね? よろしければご用件をうかがいたいのですが……」
「ご用件――ねぇ。正直俺にとっちゃあんたらにゃ何の用もねえっつーかさ。ま、言ってみりゃこっちも商売ってところでね。恨みはねえが依頼者のご要望だ」
「依頼者……ですか。それはどのような方なんでしょう」
「どのような方って言われてもな。一応金をもらって頼まれてる仕事だからね。依頼者の素性を教えるわけにもいかねえわけよ」
 そこんトコ分かってくれる? とばかりに冷笑する。つまり、この男は誰かに頼まれて金で拉致を請け負っただけということか。
「そうですか……。ご事情は分かりました。それで俺たちはこれからどうされるというわけですか?」
 冰が落ち着いた調子でいることを不思議に思ったのか、はたまた感心したのか知れないが、男は大したもんだとばかりに呆れ半分で肩をすくめてみせた。
「あんた、若えのに随分と肝っ玉が据わってんのな? 正直あの情けねえ専務とはツキとスッポンって感じだわなぁ。あんたにゃつくづく同情させられるっつーかさ、いくら仕事でもこんなマトモな兄さんをハメるのは申し訳ねえ気になってくらぁ」
 男が口を滑らせた”専務”という言葉から、拉致を依頼した黒幕はどこかの会社の専務なのだろうと推測される。だが、ここは深く突っ込まずに聞かなかったふりをしてサラリと受け流すことにした。
 おそらくこの男は思慮深いタイプではないのだろう。口を滑らせたことを指摘するよりも、上手く調子を合わせていればその内にもっといろいろなことを喋くってくれるかも知れない。そこのところの判断は冰の手腕といえた。
 男の方も冰の臆せず、かといって小馬鹿にするでもなく、怯えるでもない態度に興味を抱いた様子だ。こちらの知りたい情報をペラペラと喋り出してくれた。
「こう見えて俺はここいら界隈では顔が利く方でね。ここは大陸に近いこともあって異国のマフィア連中とも繋がりがあるわけだ。あんたらにゃ悪いが、そいつらに売り渡そうって寸法さ!」
「売り渡す……俺たちをですか? それが依頼者という方のご意向ということでしょうか」
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

禁断の祈祷室

土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。 アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。 それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。 救済のために神は神官を抱くのか。 それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。 神×神官の許された神秘的な夜の話。 ※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。

処理中です...