極道恋事情

一園木蓮

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孤高のマフィア

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「とにかく、ここに居られる内にできそうな対策を考えましょう。さっきの男の人が食事と着替えを届けてくれると言っていましたし、彼に会えたらもう少し話をしてみることにします」
 調子の良さそうな男だったし、巧みに言葉で誘導できれば思わぬ道が開けるかも知れない。場合によっては冰お得意の演技であの男をこちらの味方につけることも考えねばならない。依頼者よりもこちら側に肩入れするのが得だと思わせることができれば或いは風向きを変えられるだろうか。冰はどう出れば上手い方向へ持っていけるかを思い巡らせるのだった。

(あの人は商売で今回のことを引き受けたと言っていたよね。ということは依頼者から入る手数料と……俺たちを売り飛ばす際に入手できる金額を上回る条件を出せれば、案外コロッと考えを変えてくれるかも知れないけど……)

 男の感じからして金さえ積めば簡単に動きそうだが、問題はその金をどう都合するかである。
 むろんのこと、ここで男を騙すだけの為に大口を叩くことも手だが、ああいった男に対しては目の前に現生を積まないことには信用してはもらえまい。手っ取り早くこちらへ引き込むには口約束だけでは難しいだろう。例えばの話だが、周に連絡を取ってあの男が目を剥くような現金の束でも積んで見せれば即寝返るかも知れないが、さすがにこの手は現実味がない。
 だがまあ、風向きを変えられそうなタイミングさえ巡ってくれば一瞬の判断で光明が差すかも知れない。それを見逃さない為にも冰は神経を研ぎ澄まさねばならないと自分に言い聞かせるのだった。



◇    ◇    ◇



 一方、周らの方でも警視庁の丹羽と合流して二人の行方を追っていた。大人二人を連れ去ったとすれば、車は最低でもワゴン車かそれ以上の大型車だろうと踏んで、例の質屋周辺の防犯カメラを当たっていった。幸いなことには二人が拉致されたのは深夜である。車の台数も少ないことから、目的を絞り込むのは意外にも手こずらずに済んだ。
 目星がついたのは三台であった。一台は二トン車で、Nシステムで追った結果、近隣倉庫に出入りしているだけの商業車だと判明した。残る二台はいずれも普通のワゴン車で、一台は東北道へ入り、もう一台は西へ向かう高速道路で確認できた。
「このいずれかに拉致された二人が乗せられている可能性が高いな。運転手はどちらも男だが、あいにく現段階ではどちらと決めるには至らない。引き続きNシステムでこの二台を監視する」
 丹羽の協力でここまで絞り込めたものの、追跡には時間を有することは致し方ない。周らは何もできずに待つしかない歯痒さを噛み締めながらも、二人の無事を祈るのだった。
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