極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
615 / 1,212
孤高のマフィア

38

しおりを挟む
 察するに、その闇カジノとやらに大陸からのマフィアと称する面々も出入りしていると思われる。男が何故そんなところで遊ばせてやると言うのか真意の程は知れないが、もしかしたらそこで自分たちが品定めをされるようなことも兼ねているのだろうかと想像できた。
 しかし闇とはいえどカジノであるなら冰にとっては棚から牡丹餅も同然のまたとない機会といえる。ここは有り難く男の厚意を受けるふりをして、ひとまずは言われた通り世話になることに決めたのだった。

 夜になると男が迎えにやって来て、冰は里恵子と共に闇カジノへと案内された。昼間聞いた通りにチップは用意されていて、どこでも好きなテーブルで遊んでいいと言われたが、さすがに闇――つまりは違法なだけあって、周ファミリーやマカオの張敏たちの店とは雰囲気がまったく違う。男が自慢するだけあって確かに規模的には大きいといえるが、薄暗い中に方々から立ち上る紫煙のせいでかフロアは靄がかかっているふうで、客も見るからに危なさそうな者ばかりだ。大陸からのマフィアが混じっていてもおかしくはない――というよりもそれで当然だろうと思わせる雰囲気だった。
「里恵子ママさん、絶対に俺の傍を離れないでください」
 冰は彼女の手を取って自分のベルトを掴ませると、さりげなくスーツの上着で隠してからゆっくりとフロア内を歩き出した。本来であれば里恵子はホテルに待機させておくべきだろうが、この状況で二人が離れ離れになるのはかえってまずい。互いに目の届く範囲で共にいた方が安全との判断であった。
 男と別れると、冰はなるべく目立たないように気を配りながらフロア内をザッと見渡して歩いた。客やディーラーの雰囲気を肌で感じとっていく為だ。亡き黄老人からしつこいほどに教え込まれた身の振り方のひとつ、その場その場で周囲に溶け込み、悪目立ちせず変幻自在の自分を作り出せという教示である。
 この雰囲気の中ではどう振る舞えば有利に持ち込めるかをいち早く掴み取って、それに合わせた人物像を演じていくわけだ。
 事実、ジゴロやヤサグレといったイチモツもニモツも含んでいそうな連中の中にあっては、素のままの冰など場にそぐわない坊々の優男にしか映らない。舐められて、ただ立っているだけでちょっかいを掛けられるか、悪くすれば憂さ晴らしに因縁でもつけられるのが目に見えている。まずは周囲からそのように見られない為にも、棘のある威圧的な印象を身にまとうことが必要不可欠だ。そう踏んだ冰はすぐさま自分の雰囲気を下卑た男へと変える演出に取り掛かったのだった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...