極道恋事情

一園木蓮

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孤高のマフィア

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「プライベートの携帯番号か。これはやはり、その香山ってヤツは氷川に対して何らかの気持ちを抱いている線が強いな」
 それが色恋に近い感情なのか、はたまた全く別の仕事や出世に関することで大きな会社を率いている周を利用したいのかはともかくとして、近付きになりたい意図はあると見ていいだろう。
「そこへ持ってきて地元が同じ愛莉という女と何らかの形で接触する機会があった。話す内に二人に共通する氷川という目的に辿り着いたとしたら……」
 鐘崎の推理は相変わらず冴えていると言えるが、それならば拉致されるべきは周であろう。
「けど実際連れてかれたのは冰君の方だぜ? あの日は……結構長く里恵子ママの店にいたわけだし、俺らもだけど氷川だって一人でションベンくらいは行ったべ? その気になれば拉致るチャンスはいくらでもあっただろうにさ。里恵子ママは偶然その場にいたから一緒に拐われたとしても、わざわざ冰君を拐う目的は何だよ?」
 これは紫月の疑問である。
「冰を通して氷川にコンタクトを取りたいならば、既に連絡が来ていてもおかしくない。だが今のところ何の動きもないとすれば……考えられるのは冰を苦境に落とすことで氷川が苦しむ様子を見るのが目的か。もしくは氷川が相手では反撃に出られそうだと踏んで、拐いやすい冰を狙ったという線も考えられるが」
「ってことは……やっぱり香山ってヤツが氷川に恋愛感情を持ってて冰君に逆恨みでもしてるってことか?」
「あるいは愛莉という女が老板に門前払いを食らったことを恨んでいて、その腹いせの感情を冰さんに向けたということでしょうか」
 鐘崎と紫月、李の推測に周は思わず拳を握り締めてしまった。
「よし、ともかくここでこうしていても仕方がねえ。すぐに博多へ飛ぶぞ! これまでの情報と今の皆の意見からすれば冰と里恵子は博多へ連れて行かれた可能性が高い。まずは香山と愛莉に会って直接確かめる」
「俺と紫月も一緒に行く。念の為、警視庁の丹羽にも連絡を入れる。西へ向かったワゴン車のその後の足取りが掴めているかも知れんし、拉致犯を捕まえる為にも丹羽が指揮を取ってくれた方が都合が良かろう」
 こうして一同は一路博多へ向かうこととなったのだった。



◇    ◇    ◇



 その頃、冰と里恵子の方では拉致犯の男から意外な待遇を受けて驚かされる事態となっていた。
 冰が頼んだ里恵子の着替えと共に食事を運んできた男から彼の携わっている店で遊ばせてやると持ち掛けられたからだ。
「実は俺の組じゃカジノを経営していてな。よかったら遊んでいかねえか?」
「カジノ……ですか?」
 香港やマカオと違って日本ではカジノがあると聞いたことがないと冰が首を傾げる。男もそれに気付いたわけか、少々バツの悪そうに苦笑いをしてみせた。
「まあ……カジノっつっても闇ってやつだけどな。んでもそこそこデカくやっててよ、そこいらの闇カジノと比べりゃ本格的なわけよ! あんたらにゃ売り飛ばされる前にちったぁ楽しい思いをさせてやりてえと思ってさ」
 男いわく冰らが思っていたよりマトモな人間だった為、情けを掛けてやりたいと思ったのだそうだ。
「元手のチップはこっちで都合してやっからよ。せめても遊んでってくれよ!」
 そんな温情を掛けてくれるくらいなら売り飛ばすこと自体を考え直してくれた方が有り難いのだが、さすがにそう都合良くはいかないだろう。
 だが冰にとっては興味を引かれない話でもなかった。闇だろうがなんだろうが、カジノというならそこで事態を好転させられる機会が作れるかも知れないからだ。
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