極道恋事情

一園木蓮

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孤高のマフィア

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 そうしていよいよ一対一の対戦が始まった。
 カードが五枚ずつ配られると、冰は相変わらずに勘に障るような余裕の態度でそれを確かめる。
 勝負はしょっぱなから絵札のスリーカードというなかなかにいい目が揃ったが、なんと冰は迷わずに降りてしまった。背後で見ているギャラリーたちは『なんともったいないことを!』というようにザワつきを見せる。だが冰はどういうわけか平然としていて、まるで動じる素振りも見せない。そんな勝負が三度も続けば、さすがにディーラーの方も焦れを隠せなくなったようだ。
 そうして三度目ならぬ四度目の正直といわんばかりにまたしても勝負に出ずに「降りる」と言い放った冰を目の前に、ついぞ「チッ!」と音に出して舌打つと、
「お客さん、どういうつもりですかい。あんた、さっきっからおちょくってんのか……。勝負する気がないんだったら他のお客さんの邪魔だ。さっさと退いてもらおうか!」
 すっかり敬語も飛んで、いかに闇カジノといえどもさすがに客に対する態度ではない。ギャラリーたちがざわつき始める中、冰は相変わらずに余裕の態度でにこやかに笑ってみせた。
「勝負する気がないだなんてとんでもない。僕は真剣に考えてあなたに挑んでいるんですよ」
「嘘をつけ! さっきっからフォールドばっかりでまるっきしやる気がねえだろうが!」
「そんなことはありません。これでもファイブカードは幼い頃から家族の中では一番強かったんですよ。子供ながら祖父や父にも負けたことがないんです。それはひと勝負ひと勝負真剣に考えている証拠だって親からは褒められたものです」
「……ッ! お客さん、いい加減にして欲しいね。子供のお遊びと一緒にするとはさすがに失礼ってもんじゃありませんかね! こちらとしてもあんたが初心者だの記念だのって言うから相当な我が侭を聞いてお付き合いして差し上げてるんですよ。せっかくなら楽しんで帰ってもらおうと、さっきっからいい目を与えてやってるってのに、乗ってきやしねえ!」
 頭に血が昇ってしまったわけか、ディーラーはつい言ってはならない禁句を口走ってしまった。
 だが、そこは聞かなかったふりをして空っとぼけてみせる。
「おや、そうですか。それはどうも、お心遣い感謝しますよ。確かにね、まずまずの手が揃っているのは認めるところなのですが――。例えば今の勝負に限って言えば、僕のフォーカードではあなたのストレートフラッシュには勝てませんからね」
 だから降りたまでだとにこやかに微笑む。冰は手元のカードを裏返しては、綺麗に揃ったフォーカードを美しい仕草で扇状に開いてみせた。
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