極道恋事情

一園木蓮

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孤高のマフィア

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「ですが僕はこういった場所で遊ぶのは初めてでしてね。正直なところポーカーといえばそれくらいしか知らないのですよ。先程から皆さんのゲームを拝見してはいたんですが、何が何やらさっぱりでして。このお店にも是非にとご厚情をいただいてご招待を受けたんです。明日には海外に帰らなければならないのでね。せっかくですから僕にも出来そうなもので遊ばせていただければ嬉しいなと思いまして。どうでしょう、勝手は承知の上ですが、初心者に情けをかけると思って記念にお相手いただけませんか?」
 形のいい指先に挟まれたシガーの灰が長く伸びて今にも落ちそうである。それに気付いた隣の客がスッと灰皿まで差し出して、これではまるで映画の中に見るボスの扱いだ。言っていることと態度のギャップがあり過ぎて、凄腕なのかド素人なのかがまるで分からない。
「ああ、ありがとう。お借りしますよ」
 丁寧に礼を述べながらも冰は当たり前のように差し出された灰皿に灰を落とすと、ますます堂々たる素振りでカードが配られるのを待った。
「如何でしょう、皆さんをお待たせしては申し訳ありませんし、ちょっとだけお付き合いくださいな。雰囲気を楽しんだら早々に退散致しますので」
 ディーラーの方でもこの若い身勝手な客が実は隠れたやり手なのかズブの素人なのか興味が湧いたようだ。
 もしもただの素人ならば、せいぜいいたぶれるだけいたぶって、その図々しい鼻っ柱をへし折ってやるのも悪くない。懐が空になるまで巻き上げて、ここは子供の遊び場ではないと灸を据えてやるのもオツというものだ。
「分かりました。では仰せの通りのファイブカードでお付き合いさせていただくのもやぶさかではありません。その代わりミニマムを上げさせてもらいますが、それでよろしければですが」
 これだけの我が侭に付き合うのである。掛け金の最低額を通常よりも高い設定から始めさせてもらうという意味である。どうせミニマムの意味すら分からないだろうと圧をかけたが、冰がすんなりとうなずいてみせたのにまたしてもディーラーにとっては苛立たされることとなった。
「それで結構ですよ。こちらとしても無理を言っているわけですからね。設定はあなたにお任せしますよ」
 にこやかに微笑むその表情に、思わず『チッ!』と舌打ちたいのを抑えて、ディーラーはカードの束を手に取った。

(青二才のクソガキが! 目に物見せてくれる!)

 この際、誰のどういった縁でここに招待されたのかなどどうでもいい。ディーラーの瞳の奥には、ただただ目の前の勘に障る男を叩きのめしたいという感情だけがメラメラと燃え盛っているようでもあった。
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