極道恋事情

一園木蓮

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孤高のマフィア

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「まあな。ここには年に一、二度顔を出しちゃいるが、あんたのような上玉に出会えるとは運がいいぜ! あんたを連れ帰ればきっとボスも喜んでくださるだろうぜ」
「ボスって……あなたの上の御方ですか? まさかそんな……僕ごときで喜んでくださるとは思えませんけど……」
「そんなことはねえ! 情けねえ話だが、俺はファミリーの中でも下っ端の部類だからな。正直ボスの顔さえ間近で拝んだことはねえんだが、あんたのような上玉を獲得したとなりゃ、一度くれえは会ってくださるかも知れねえ。そうすりゃ俺も一気に幹部に格上げなんてのも夢じゃねえかもな!」
「はぁ……」
「とにかく俺のところに決めてくれる気はねえか? できる限り丁重に扱わせてもらうからよ!」
 是が非でも自分のところで獲得したいと逸る男に他の連中が指をくわえて見ているはずもない。
「ふん、組織の中でも下っ端なんてことを堂々と抜かすヤツの口約束なんざ当てになるかってんだ! なぁ、お若い兄さん! 俺は台湾から来ているんだが、これでも組織じゃ幹部を張ってる。そいつよりもいい条件であんたを引き取ると約束するぜ!」
「おい、てめえら! 勝手に決めるな! 俺ンところはマカオだ。カジノといやマカオだろうが! ウチに決めてくれればマカオでも最上級の店でディーラーとして使わしてもらう。是非ともウチに来ちゃくれねえか?」
 香港、台湾、マカオと出揃って、それぞれが自分のところが一番だと主張する。正直なところ冰にとってはどこへ連れて行かれたとしてもその後の交渉は何とかなりそうだ。この店が闇カジノだったことが不幸中の幸いといえた。
 一番いいのは香港だろう。ボスというのが周の父親の隼である可能性が高いというのもあるが、仮にそうでなかったとしてもこちらの素性を話せば聞く耳は持ってくれるかも知れない。マカオになったとしても張敏がいるし、何とかして彼に取り継いでもらうことができれば万々歳だ。台湾にはさすがに伝手はないが、鐘崎の父親がしょっちゅう仕事で訪れていると聞いているし、組織の上層部ならば鐘崎組の名は熟知しているだろうからだ。
 さて、どう出ようか。冰が即答せずにいると、香港から来ているという男がまたもや自分のところに決めて欲しいと粘ってきた。
「だったらこうしねえか? 俺たちの中で一等早く確実な条件を提示できた者がこの兄さんをもらうってことでどうだ。それぞれ上に許可を取って、口約束だけじゃねえって証拠を見せ合うんだ。その上でこの兄さんに行きたいところを決めてもらえば恨みっこなしだ」
「ふん! 上に許可なんざ取らずとも俺は今この場で即決できるがな。言っただろう? 俺は幹部の立場にある。買取額も上に訊かずとも今この場で俺自身が判断できる決定権があるのさ。おめえら下っ端とはワケが違うんだ」
 台湾から来ているという男が誇らしげに息を巻く。香港の男も負けてはいなかった。
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