極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
639 / 1,212
孤高のマフィア

62

しおりを挟む
「既に部下が聞き込みに回ったところ、香山自身もどうやら今回の拉致ともまったくの無関係というわけではなさそうだ。ここの経営に携わっている男と会っていたらしいことも裏が取れている。事情聴取が済んだら詳しい結果を報告する」
 別働隊で地元県警の刑事らが調査を進めた結果、拉致を依頼したのは香山で間違いないとの情報が上がってきているらしく、彼の身柄は一旦県警預かりになるらしい。拉致の実行犯との間でどういった取引きがあったのかなどの詳しい事は今後突き詰めて調査が成されるとのことだった。
 むろんのこと周にとっては自分の命よりも大事な唯一無二の伴侶をこんな目に遭わされた以上、おめおめと警察の手に引き渡すのは許し難いことであり、どうあっても自らの手で落とし前をつけたいのは山々である。だが、今回の捜索で丹羽に助力を頼んだ以上、一旦は彼らの手に渡し、法に則ったやり方で処するのは致し方なかろう。
 ただ、拉致の実行犯は東京から九州までの遠距離を普通のワゴン車で移動したわけである。以前もマカオの張や香港の企業家に拐われたことがあったが、いずれもプライベートジェットを所有しているほどの富豪連中だった。連れ去る手段からしても最低限の安全は予測できていたと言える。
 それから比べると今回は移動手段からしてずさんにも程があるというものだ。日本の東の果てから最南端までの遠距離を高速道路を使って拉致するなど、たまたま運良く何事もなかったから良かったものの、事故を起こす可能性もあったわけだ。何より狭い車の中で長時間に渡って窮屈な思いをさせられたわけである。万が一事故などで冰と里恵子が命を落としていたら――と考えると、はらわたが煮えくりかえるなどでは済まされない。
 理由はどうあれ、その原因を作った香山を法の裁きだけで赦すわけにはいかない。
 世話になった丹羽はもちろんのこと、心やさしい冰自身は無事に解決できた以上報復などという事は望まないであろうが、周には自らの処し方で――というよりもファミリーなりのやり方でと言った方が正しいか――落とし前をつけなければ到底気が治まるわけもない。
 そんな思いを呑み込んで、今はともかく沈黙のまま警察に従うしかない。素直に丹羽に任せる周の心の内を理解しているのは同じ世界に生きる鐘崎と源次郎、李ら側近たちのみであった。

 そうして丹羽ら警察を見送った後、一同は博多駅近辺のホテルで一先ず身体を休めることにした。
 時刻は深夜だ。このまま東京へ戻るよりも先ずは冰と里恵子の心身の疲れを労い養うのが先決である。
 今回の件で惜しまず助力を買って出てくれた鐘崎らに対しても、せめてもの詫びと礼の気持ちを込めて周が手配した最上級の部屋で一夜を寛ぐこととなったのである。



◇    ◇    ◇


しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...