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孤高のマフィア
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その後、周らが東京へ戻ると、頃は花見の季節である。
ちょうど気象庁による桜の開花宣言が出されたのもあって、もう数日を待たずして周の社でも花見イベントが催されるので、帰って早々ではあったが感傷に浸る間もなくの大忙しだ。その準備ももちろんだが、まずは何を置いても救出の大いなるきっかけをくれた受付嬢たちに礼を言わねばならない。冰は帰るとすぐに清美と英子の元へと向かったのだった。
「雪吹君! まあ! 無事で良かったわ!」
「ご心配をお掛けしてすみません! お二人のお陰で今回もまた大事に至らずに済みました。本当に助かりました。ありがとうございます!」
「ううん、そんなこと全然! でも無事に帰って来られて良かったわ」
「大変でしたね! でもお元気そうで安心しました!」
三人で輪になり手を取り合って喜ぶ。
「そうだわ。帰って早々で悪いんだけど雪吹君! もうお花見は今週末だから! この前劉さんにも渡しておいたんだけどこれが資料ね。準備は例年通り済んでいるわ!」
清美が参加者名簿やイベントの進行表などを取り出してきて広げてみせる。
「お花見の方も全部お任せしきりになってしまってすみません! 今年も盛況になりそうですね! イベントの景品などの発注は済んでいますので、明日には届くと思います」
「ありがとう! 桜の方も週末頃がちょうど満開かしらね。楽しみだわ!」
かくしてうららかな春の中、日常が戻ってきた幸せに笑顔を咲かせる一同であった。
冰は清美たちとの打ち合わせを済ませると、社長室へと戻って花見イベントの最終確認に取り掛かった。というのも、今回は冰がまたしても拉致に遭ったということで、心配した周ファミリーが香港からやって来るという連絡を受けていたからだ。せっかくなので彼らにも花見を楽しんでもらえたらと、社のイベントとはまた別口で、日を改めて屋形船などの手配をしたいと思ったのだ。それらを李と打ち合わせながら舅たちに喜んでもらえるもてなしに様々頭をひねる冰であった。
「冰さん、今しがた連絡がございまして、ちょうど鐘崎組の皆さんも屋形船でお花見をされるとのことですので、今年は船を二艘用意してご一緒に如何ですかとのことですよ!」
「わぁ! それは素敵ですね! 紫月さんたちと一緒なら楽しさ倍増ですよー」
「組の若い衆さん方専用に一艘と、老板のご家族と鐘崎の親父さんに若さん、紫月さんたち。それに我々といった具合で乗せていただけるそうです。鐘崎組のご縁のある船宿だそうで、手配もしてくださっているとのことでした」
「そうですか! 何から何まで申し訳ないなぁ。でもすごく楽しみですね!」
屋形船での花見は社のイベントの翌日に行うということで、周ファミリーは三日ほどの滞在予定だそうだ。
「社のイベントにも間に合うので、ファミリーの皆様にはお邸の室内からご見学いただくように手配しております」
さすがに周の家族となれば社員たちも興味津々だろうし、イベント会場に連れ出すわけにもいかない。ファミリーには真田ら邸の者と共に室内でディナーを楽しんでもらうことにしたのだった。
ちょうど気象庁による桜の開花宣言が出されたのもあって、もう数日を待たずして周の社でも花見イベントが催されるので、帰って早々ではあったが感傷に浸る間もなくの大忙しだ。その準備ももちろんだが、まずは何を置いても救出の大いなるきっかけをくれた受付嬢たちに礼を言わねばならない。冰は帰るとすぐに清美と英子の元へと向かったのだった。
「雪吹君! まあ! 無事で良かったわ!」
「ご心配をお掛けしてすみません! お二人のお陰で今回もまた大事に至らずに済みました。本当に助かりました。ありがとうございます!」
「ううん、そんなこと全然! でも無事に帰って来られて良かったわ」
「大変でしたね! でもお元気そうで安心しました!」
三人で輪になり手を取り合って喜ぶ。
「そうだわ。帰って早々で悪いんだけど雪吹君! もうお花見は今週末だから! この前劉さんにも渡しておいたんだけどこれが資料ね。準備は例年通り済んでいるわ!」
清美が参加者名簿やイベントの進行表などを取り出してきて広げてみせる。
「お花見の方も全部お任せしきりになってしまってすみません! 今年も盛況になりそうですね! イベントの景品などの発注は済んでいますので、明日には届くと思います」
「ありがとう! 桜の方も週末頃がちょうど満開かしらね。楽しみだわ!」
かくしてうららかな春の中、日常が戻ってきた幸せに笑顔を咲かせる一同であった。
冰は清美たちとの打ち合わせを済ませると、社長室へと戻って花見イベントの最終確認に取り掛かった。というのも、今回は冰がまたしても拉致に遭ったということで、心配した周ファミリーが香港からやって来るという連絡を受けていたからだ。せっかくなので彼らにも花見を楽しんでもらえたらと、社のイベントとはまた別口で、日を改めて屋形船などの手配をしたいと思ったのだ。それらを李と打ち合わせながら舅たちに喜んでもらえるもてなしに様々頭をひねる冰であった。
「冰さん、今しがた連絡がございまして、ちょうど鐘崎組の皆さんも屋形船でお花見をされるとのことですので、今年は船を二艘用意してご一緒に如何ですかとのことですよ!」
「わぁ! それは素敵ですね! 紫月さんたちと一緒なら楽しさ倍増ですよー」
「組の若い衆さん方専用に一艘と、老板のご家族と鐘崎の親父さんに若さん、紫月さんたち。それに我々といった具合で乗せていただけるそうです。鐘崎組のご縁のある船宿だそうで、手配もしてくださっているとのことでした」
「そうですか! 何から何まで申し訳ないなぁ。でもすごく楽しみですね!」
屋形船での花見は社のイベントの翌日に行うということで、周ファミリーは三日ほどの滞在予定だそうだ。
「社のイベントにも間に合うので、ファミリーの皆様にはお邸の室内からご見学いただくように手配しております」
さすがに周の家族となれば社員たちも興味津々だろうし、イベント会場に連れ出すわけにもいかない。ファミリーには真田ら邸の者と共に室内でディナーを楽しんでもらうことにしたのだった。
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