極道恋事情

一園木蓮

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孤高のマフィア

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 同じ頃、周の方では今回の件の報告を兼ねて香港の父親と兄を相手にリモートでの話し合いがなされていた。パソコン画面の向こうには厳しい表情の二人が拉致に遭った冰の心配をしている。
『それで冰は本当に大丈夫なんだな?』
「ええ、お陰様で。特に心に傷を負った様子もなく、すっかり元気にやってくれています」
『そうか。だったらいいが――。皆の前では心配を掛けんと気を張っているとすれば気の毒だからな。よくよく注意して様子を気に掛けてやってくれよ』
「ありがとうございます」
『ところで冰を売り買いするだのと言っていた男についてだが、日本での刑を終えたら我々の方で預かる。それで構わないな?』
「はい、私の方は結構です。父上と兄上にはお手を煩わせてしまい恐縮ですが」
『これは我々ファミリーの問題だからな。偶然とはいえ、そういった事実を洗い出してくれたお前と冰には感謝している』
「恐縮です」
 父の隼の方でも売り買いに関わっていたという男の素性を詳しく調べて対処するとのことだった。
『それより今回の騒動のきっかけを作った香山とかいう男だが、お前の社に勤めていた者だとか。そっちの方はどうするつもりだ』
『お前に恋情を抱いていたそうだが、自分自身で手を汚さずに金で雇った者に罪をなすり付けるなど到底許されん行いだ。何ならそいつについてもこちらで処理してやっても構わんぞ』
 父と兄が交互にそんなことを言う。彼らにとっては周と同じく冰もれっきとしたファミリーであるわけだから、それに手を出されたとあっては自分たちで制裁をくだすのは当然という認識でいるようだ。
「お二人のお気持ちはたいへん有り難く存じます。ですが、香山の件は私の甘さが招いた問題ゆえ、私の方で処理致しますのでどうぞご心配くださいませんよう」
 周が丁重に頭を下げると、父と兄も『そうか』とうなずいた。
「それよりもわざわざご来日いただけるということで、お心遣いに感謝いたします。日本はちょうど花見の季節ですし、冰もお会いできるのを楽しみにいろいろと計画をしている様子です。どうぞお気をつけていらしてください」
『ああ。すまんな。こちらからは香蘭と風の嫁の美紅が同行させてもらう。本当はあゆみも一緒にと思っていたんだが、あいにく泊まりがけの健康診断の予約を入れてしまっていると言ってな。ずらせばいいと言ったんだが、病院に迷惑が掛かると言って聞かんのだ。そんなわけで今回は香蘭と美紅を連れて行く。二人とも今から大はしゃぎだ』
 あゆみというのは周の実母のことである。ファミリーは何かにつけてあゆみのことも分け隔てなく気に掛けてくれるのだが、毎回それに甘えてはいけないという気持ちもあるのだろう。健康診断というのも全くの嘘ではないのだろうが、おそらくはあゆみ自身がそういった理由をつけて今回は遠慮したのだと思えた。周にはそんな母の気持ちがよく分かる気がしていた。
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