極道恋事情

一園木蓮

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孤高のマフィア

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 その後、医師の鄧がすぐさま真田の手当てに取り掛かったが、幸いなことに傷は浅く大事には至らなかったことにホッと胸を撫で下ろす。冰は鄧による処置の間もずっと真田の側に寄り添うにして、その背をさすっていた。
「真田さん、本当にすみません! 怖い目に遭わせてしまって……」
 心底心配そうに覗き込んでくる冰に、真田は全く問題ないと言って誇らしげに胸を張ってみせた。
「大丈夫ですぞ! この真田、だてに坊っちゃまのお側にお仕えしている訳ではございません! これしきのこと、なんともありませんぞ!」
 一生懸命元気な姿を見せようと笑顔で応えてくれる様子に、本物の肉親のような愛情を沸々と感じる。冰はそんな真田と毎日一緒に過ごせることの幸せをしみじみと噛み締めるのだった。
 そしてそれは真田も同様で、何よりも冰が自分を父親も同然と言ってくれたことが本当に嬉しくてならなかったと瞳を潤ませた。冰もまた然りだ。真田が坊っちゃまと冰さんの為ならば命など惜しくないと、必死に逃してくれようとしたことに涙のにじむ思いだったと言って二人は手を取り合った。まさに在りし日の黄老人と過ごした日々のように、出会って二年余り、冰と真田は本物の家族のように互いを大切に思う間柄になっていたのであった。
「あれ……? そういえば白龍たちは?」
 周りを見渡せど周の姿がないことに気付く。そういえば父の隼と兄の風も見当たらない。キョロキョロと辺りを見渡している様子に紫月が『あっちだ!』と木陰を指しながら苦笑してみせた。
「ご亭主は只今制裁中だ」
 むろんのこと香山に対してである。
「制裁って……」
 まさか殺しちゃったりしないですよねと心配そうに眉をひそめる冰に、紫月はおどけるように笑ってみせた。
「心配はいらねえ。氷川が手を掛けるような価値なんぞこれっぽっちもねえヤツだからな」
 ただ、拉致を始めこれだけのことをしてのけた相手である。ファミリーにはファミリーなりのやり方で落とし前をつけなければならないこともあるのだと言って、紫月は冰をなだめた。冰もまたそこのところは理解しているのだろう。ホッとしたように肩を撫で下ろすと、切なげにうなずいたのだった。
 そうこうしている内に丹羽がよこしたという所轄の警官たちが到着した。ちょうど鄧が真田の手当ての為に医療具を広げていたので、それを目にするなり警官たちは蒼白となって駆け寄って来た。
「大丈夫ですか!? お怪我を負われたのですか!?」
「犯人は……」
 慌てる彼らに対しては医師の鄧が応対を買って出る。
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