極道恋事情

一園木蓮

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孤高のマフィア

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「ひ……ッえああああ……た、助けてください……! 誰かー……誰か……!」
 必死に叫ぶも、あまりの恐怖で声になっていない。慕っていたはずの男に信じられないような仕打ちを食らって、香山の中で恐怖とも恨みともつかないような複雑な感情が渦巻いていくようだった。
「し、信じられない……あなたがこ、こんなことするなんて……! け、警察に言いますよ……!」
「警察だ? どの口が言う。今頃はてめえを追ってその警察が血眼になって捜してやがるのを忘れたか!」
「ひ、ヒィーーー……! し、知らない! 俺は何もしてない……! あんたたちこそ……こんなことして逮捕されるぞッ……!」
「逮捕だ? そんなわけあるめえ。この日本には正当防衛ってのがあるのを知らねえほどバカなのか、てめえは」
「せ、正当防衛……」
 その言葉で本当に殺されてしまうのではという恐怖が全身を震わせる。目の前の男はもはや香山が知っている憧れの社長ではない。まるで別人のような圧を伴った怖い男にしか映らなくなっていたのだ。
「てめえは真田を羽交い締めにして怪我を負わせた。その前は冰を拉致し、異国へ売り飛ばす企てに加担した。何よりその獲物だ。てめえが刃物を振り回しているところは俺の仲間が証拠として動画で残している。言い逃れはできねえぞ」
「そ、そんな……! 知らない! 俺は何も知ら……」
 言い終わる前にもう一撃を食らって、香山はその場で崩れ落ちた。もう言葉を発することさえままならないようだ。
「そのくらいでいいだろう。後はこの国の司法に任せるとする」
 隼は息子の肩に手をやって止めると、無惨にも地面の上でのびている男に向かってもうひと言を付け加えた。
「お前は俺の大事な者たちに手を出した。本来ならばこんなもので許す筋合いもねえがな。次に俺たちの前にツラを見せることがあれば、その時は本当に最期だ。よく肝に銘じておけ!」
 香山には既に何を言われているのかも分からなかったようだが、本能で命の危険に繋がることだけは感じたようだ。
 その後、周らに引き摺られて香山は駆け付けた警官たちに引き渡された。パトカーへと連れ込まれようとしていたちょうどその時に警視庁の丹羽も到着したが、香山が生きて動いている姿を確認してホッと肩を落とした。丹羽にしてみれば周らが彼を許し置くはずがないことを重々承知していたし、その気になれば跡形も残らない始末の仕方を心得ている連中だと知っているからだ。
「周……すまなかった……。まったくもって我々の不手際だ。この通りだ――!」
 丹羽は周らに向かって丁重に頭を下げつつも、言葉にこそしなかったが、よく踏みとどまってくれたと言わんばかりに目を伏せて詫びの気持ちに代えたのだった。
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