極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
665 / 1,212
謀反

しおりを挟む
 事の発端はまさに今しがた男が言った通りで、マフィアの次期頭領を継ぐ周風――つまりは周焔ジォウ イェンの兄であるが――が自分の世代の組織を固める為に側近などの人事を正式決定する動きが出始めたことに遡る。
 この男も現頭領である周隼の全盛期には幹部とまではいかないまでも、まあ将来的にはそれなりの地位に取り立てられるだろうと思われていたものだ。
 ところがいざ次世代のブレーンが決まってくる段階になると、扱いに不満を覚えるようになってきたのだ。もはや側近どころの話ではなく、下手をすると新入りの若い者らにも劣るような立場しか与えられず、当然男としては納得がいかなかったわけである。
 前々から長男の周風とはそりが合わない向きがあったものの、こうまであからさまに酷い扱いを受けようとはさすがに想像もつかなかったというのが実状だ。
 だが当の周風から言わせれば、この男が陰で後ろ暗い事に手を染めているのを知っていた為、こういった処遇にしたという理由があった。むしろ破門にせずに組織に置いてやっているだけでも分厚い待遇というところなのだ。
 男の名は羅辰ルオ チェンといった。年は四十半ばで、若い頃から組織に入った人物である。
 外見は厳つく体格もいい。マフィアとしての風格という点ではなかなかであるが、野心家で、己の利益の為なら他がどうなろうと構わないやり方と、筋者堅気の見境もなしに平気で人を騙して陥れるという数々の悪行が目立つ男だった。周風としては自らの側近として認めたいとは思わなかったのだ。
 羅の方でもそんな風のことを綺麗事しか言わない温室育ちのお坊ちゃんと見下しているきらいがあって、これではそりが合わないのも当然といえよう。
 そこへもってきて風の人事に腹を立てた羅辰は、これまでの鬱憤が一気に爆発した――とまあそんな具合だった。
「俺はファミリーを抜けることに決めたぜ。今はまだボスが健在だが、将来的にあの甘ちゃんの下で働くなんざまっぴらだ!」
 酒を煽りながらそう吐き捨てる羅に舎弟の方も驚き顔で閉口してしまった。
「ですが兄貴……ファミリーを抜けてこれからどうしようってんです? もちろん兄貴が抜けるっておっしゃるなら自分はついて行きますよ? けど……俺らみてえな半端者がマトモな仕事に就くなんざ、いささか無理ってもんだと思いますがね……」
「は! マトモな仕事に就こうなんざ甚だ思っちゃいねえわ! それより俺はてめえで組織を構えて周風のヤツを見返してやるつもりだ」
 憤る兄貴分の言葉に舎弟は驚き顔で眉をひそめた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...