667 / 1,212
謀反
4
しおりを挟む
羅の計画では、他にも自分たちと同じように周一族のやり方に不満を抱いている者は少なからずいるので、その者たちに声を掛ければ鉱山から原石を運び出す手段や人員は割合容易に整うだろうという。
ただ、問題がひとつ。肝心の鉱山に入るには現場での厳しい警備によって、周家の血筋の者が直に出向かない限り、簡単には原石の保管場所まで案内してはもらえないらしいということだった。
「あのファミリーはな、年に数度は必ず一族の誰かが現地に出向いて視察を行っているんだが、代理の者だけで行ったんじゃ山にはおろか麓の村にすら入ることもできねえって話だ」
そこさえクリアできれば後の手筈はすっかり整っているのにと男は悔しそうに歯軋りする。
「こうなりゃ一族の誰かを無理矢理にでも拉致して鉱山まで引きずって行くってのも手だが、さすがに香港にいるボスと長男の周風には手が出せねえ。周りにゃ鉄壁ってくれえのガードが眼を光らせていやがるからな。唯一可能なのは日本の東京にいる次男坊だが……俺たちが犯人だとバレたらそれこそボスは黙っちゃいねえだろう」
次男を拉致して薬物でも盛ってしまえば、鉱山まで連れて行く自体はなんとかなるだろうと羅は言う。だが問題はその後だ。如何に香港よりもガードが甘いとしても、次男坊の側にも精鋭の側近と言われる者たちが付いている。すぐに香港のファミリーの元へと報告がいくのは間違いない。
犯行を別の誰かになすり付けるにしても、さすがにそこまで都合のいい輩など思い付かないと言ってはまた歯軋りを繰り返した。
そんな様子を見ていた舎弟が思い付いたように身を乗り出してこう言った。
「そうだ! でしたら……兄貴! 耳よりな話がありますぜ!」
「耳よりな話だ?」
羅は怪訝そうに眉根を寄せながらも半信半疑で舎弟を見やった。
「実はちょいと面白い話を耳にしましてね。兄貴もご存知でしょうが、つい数ヶ月前のことですよ! 日本の九州にある闇カジノに出入りしていて、しょっ引かれた野郎がいたでしょう。なんでもそこで売り買いしようとした若い日本人が実は周ファミリーの次男坊の連れ合いだったとかで、ファミリーからえらい制裁を食らったっていう」
「ああ……そういやそんなことがあったな。あの野郎、陳とかいったか。そん時の一件が仇になってファミリーから絶縁されたと聞いたがな」
二人が話しているのは半年ほど前に冰と里恵子が拉致され、九州の博多で繰り広げられた事件のことだ。
ただ、問題がひとつ。肝心の鉱山に入るには現場での厳しい警備によって、周家の血筋の者が直に出向かない限り、簡単には原石の保管場所まで案内してはもらえないらしいということだった。
「あのファミリーはな、年に数度は必ず一族の誰かが現地に出向いて視察を行っているんだが、代理の者だけで行ったんじゃ山にはおろか麓の村にすら入ることもできねえって話だ」
そこさえクリアできれば後の手筈はすっかり整っているのにと男は悔しそうに歯軋りする。
「こうなりゃ一族の誰かを無理矢理にでも拉致して鉱山まで引きずって行くってのも手だが、さすがに香港にいるボスと長男の周風には手が出せねえ。周りにゃ鉄壁ってくれえのガードが眼を光らせていやがるからな。唯一可能なのは日本の東京にいる次男坊だが……俺たちが犯人だとバレたらそれこそボスは黙っちゃいねえだろう」
次男を拉致して薬物でも盛ってしまえば、鉱山まで連れて行く自体はなんとかなるだろうと羅は言う。だが問題はその後だ。如何に香港よりもガードが甘いとしても、次男坊の側にも精鋭の側近と言われる者たちが付いている。すぐに香港のファミリーの元へと報告がいくのは間違いない。
犯行を別の誰かになすり付けるにしても、さすがにそこまで都合のいい輩など思い付かないと言ってはまた歯軋りを繰り返した。
そんな様子を見ていた舎弟が思い付いたように身を乗り出してこう言った。
「そうだ! でしたら……兄貴! 耳よりな話がありますぜ!」
「耳よりな話だ?」
羅は怪訝そうに眉根を寄せながらも半信半疑で舎弟を見やった。
「実はちょいと面白い話を耳にしましてね。兄貴もご存知でしょうが、つい数ヶ月前のことですよ! 日本の九州にある闇カジノに出入りしていて、しょっ引かれた野郎がいたでしょう。なんでもそこで売り買いしようとした若い日本人が実は周ファミリーの次男坊の連れ合いだったとかで、ファミリーからえらい制裁を食らったっていう」
「ああ……そういやそんなことがあったな。あの野郎、陳とかいったか。そん時の一件が仇になってファミリーから絶縁されたと聞いたがな」
二人が話しているのは半年ほど前に冰と里恵子が拉致され、九州の博多で繰り広げられた事件のことだ。
22
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる