極道恋事情

一園木蓮

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謀反

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「だったら……アレを使うしかねえか」
 羅はやや緊張の面持ちで拳を握り締めた。
「アレってのは何です?」
「……薬だ。拉致る時にゃ催眠剤でも盛ればいいと思っていたが、どうせならもっと徹底的なブツを使って、ヤツの思考能力を奪っちまうのも手だな」
「思考能力を奪う――ですか? そんな都合のいい薬があるんですかい?」
「ああ……。禁止薬物のひとつだが……前にちょっとした伝手で手に入れた物だ。これまではさすがに使ったことはなかったんだが」
 男が口にした薬物の名はとんでもない代物であった。
「そいつはデスアライブといってな、通称DAと呼ばれているめちゃくちゃアブねえ代物よ。神経系統を狂わせるとかで、一服盛るってーとこれまでの記憶が曖昧になっちまうそうでな。そいつを食らったが最後、自分がどこの誰だかも分からなくなるそうだ。元々は戦闘ロボットを作り出す為に開発されたっていう闇の薬物だが、今じゃ生産すら禁止になってる」
「……うへえ、随分とまたおっかねえ代物ですね。そんな大層なブツを兄貴は持ってるってんですかい?」
「まあな。周焔を掻っ攫うことに成功したら、ヤツにそれを盛って言うことを聞かせ、鉱山に潜り込む。記憶喪失も同然だから、せいぜい親身になって『あなたはこの鉱山の開発に力を入れて注いできた御方なんですよ』とでも言えばいい。腑抜けの焔は鉱山に出入りする為のただの鍵ってわけだ」
「なるほど! それならなんとかなりそうですね」
 デスアライブ、通称DA。以前に地下の三千世界で鐘崎が食らったことのある危険薬物だ。男たちはそれを周に盛ろうとしているのだ。
「ついでにその元社員って野郎には周焔が記憶を失くして気の毒な目に遭ってるとでも言えばいい。これを機に本当に恋人になって愛しの焔とずっと一緒に暮らせばいいとでも言やぁ喜んで話に乗ってくるに違いねえ」
 羅は早速その元社員というのを捜し出すよう舎弟に指示を出した。
「そいつの名前は分かってるのか?」
「ええ。確かコウヤマとかいってたような……。地元じゃそこそこ名のある文具店の御曹司だそうで。まあ調べるのはわけないんで任せてくだせえ」
「ふむ、だったらそっちは上手くやってくれ。俺の方では周焔を掻っ攫う手配に掛かる。元社員の方はてめえに任せたぜ!」
「分かりました。すぐに手はずを整えますぜ」
 水面下でそんな企みがなされているなど露ほども知らない当の周は、遠く離れた東京の地で愛しい冰と共に穏やかで幸せに満ちた日々を送っていたのだった。
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