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謀反
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知らせを受けて劉と医師の鄧、それに真田までもが一緒に病院に駆け付けたが、そこで初めて周がいないことを知って一同は蒼白となった。二人を救助した救急隊員の話では、通報を受けて駆け付けた時には既に周は居なかったということだ。
何が起こったのか状況を知ろうにも肝心の李と運転手は未だ意識不明の状態だ。命に別状はないとのことで、それだけは安堵したものの、周に何かあったことは間違いない。
「拉致を疑うべきかも知れません……。冰さん、すぐに鐘崎組へ連絡を! それから我々は事故のあったという現場へ急ぎましょう!」
もしかしたら何かの手掛かりが掴めるかも知れない。医師の鄧の提案で、病院での付き添いには真田に残ってもらうことにして一同は現場へと向かった。
時刻は既に未明である。車通りの少ない時間帯ということもあってか、現場にはまだ事故車両が残っており、警察へと運ばれる前であった。冰自身も普段周と共に乗っている高級車のフロント部分が無惨にも潰れているのを目の当たりにして、背筋が凍りつく。
ぶつかった相手は大型のトラックだ。いかに頑丈な高級車といえども、これが相手ではひとたまりもないだろう。現場には車だけが乗り捨てられていて、運転手以下同乗者がいたかどうかも分からないという。分かっているのは犯人は逃げてしまって、今現在も行方が掴めていないという事実だけだ。
次第に膝が笑い出し、その場で立っていることもやっとといった調子の冰を支えるようにして鄧が警察官に事情を訊いていた。
しばらくして鐘崎が紫月と組の若い衆ら数名を伴って現場へと駆け付けてくれた。彼らの顔を見た瞬間に一気に気が緩んだわけか、冰の瞳からは溢れんばかりの涙がこぼれ落ちた。そんな彼を抱き包むようにして紫月が宥める傍らで、鐘崎が迅速に対応策を巡らせてくれていた。
「来る途中に警視庁の丹羽に連絡を入れておいた。ヤツもすぐに合流してくれるそうだ」
鐘崎の話では事故車両を警察が回収してしまう前に自分たちで車内に残っている痕跡などを調べたかった為、丹羽への協力を仰いだということだった。彼がいればある程度の自由は利くだろうからだ。仮に周が拉致に遭ったと考えて、警察に任せているだけでは行方が追い切れないとの思いからである。
丹羽もまたそんな鐘崎の考えが読めていたようで、到着するとすぐに車内を調べられるよう手を回してくれたのは有り難かった。
「大型トラックで体当たりして運転手と助手席を潰したっていうわけか……。目的はやはり氷川だろうな。氷川が後部座席に乗っていることを知っていての犯行と思われる」
「鐘崎、犯人に心当たりがあるか?」
丹羽が訊く。
「手口から見て同業者の可能性が高いと思われるが……」
「ということは周の実家の関係者ってことか」
「断言はできんが、ほぼ間違いねえだろうな。最初に駆け付けた警官の話によると、事故があってから通報までの間に少々タイムラグがあったようなんだが、その理由が気に掛かる。事故を目撃した通行人の話だと、既に救急車が来ていて担架で怪我人を運んでいたそうだ」
何が起こったのか状況を知ろうにも肝心の李と運転手は未だ意識不明の状態だ。命に別状はないとのことで、それだけは安堵したものの、周に何かあったことは間違いない。
「拉致を疑うべきかも知れません……。冰さん、すぐに鐘崎組へ連絡を! それから我々は事故のあったという現場へ急ぎましょう!」
もしかしたら何かの手掛かりが掴めるかも知れない。医師の鄧の提案で、病院での付き添いには真田に残ってもらうことにして一同は現場へと向かった。
時刻は既に未明である。車通りの少ない時間帯ということもあってか、現場にはまだ事故車両が残っており、警察へと運ばれる前であった。冰自身も普段周と共に乗っている高級車のフロント部分が無惨にも潰れているのを目の当たりにして、背筋が凍りつく。
ぶつかった相手は大型のトラックだ。いかに頑丈な高級車といえども、これが相手ではひとたまりもないだろう。現場には車だけが乗り捨てられていて、運転手以下同乗者がいたかどうかも分からないという。分かっているのは犯人は逃げてしまって、今現在も行方が掴めていないという事実だけだ。
次第に膝が笑い出し、その場で立っていることもやっとといった調子の冰を支えるようにして鄧が警察官に事情を訊いていた。
しばらくして鐘崎が紫月と組の若い衆ら数名を伴って現場へと駆け付けてくれた。彼らの顔を見た瞬間に一気に気が緩んだわけか、冰の瞳からは溢れんばかりの涙がこぼれ落ちた。そんな彼を抱き包むようにして紫月が宥める傍らで、鐘崎が迅速に対応策を巡らせてくれていた。
「来る途中に警視庁の丹羽に連絡を入れておいた。ヤツもすぐに合流してくれるそうだ」
鐘崎の話では事故車両を警察が回収してしまう前に自分たちで車内に残っている痕跡などを調べたかった為、丹羽への協力を仰いだということだった。彼がいればある程度の自由は利くだろうからだ。仮に周が拉致に遭ったと考えて、警察に任せているだけでは行方が追い切れないとの思いからである。
丹羽もまたそんな鐘崎の考えが読めていたようで、到着するとすぐに車内を調べられるよう手を回してくれたのは有り難かった。
「大型トラックで体当たりして運転手と助手席を潰したっていうわけか……。目的はやはり氷川だろうな。氷川が後部座席に乗っていることを知っていての犯行と思われる」
「鐘崎、犯人に心当たりがあるか?」
丹羽が訊く。
「手口から見て同業者の可能性が高いと思われるが……」
「ということは周の実家の関係者ってことか」
「断言はできんが、ほぼ間違いねえだろうな。最初に駆け付けた警官の話によると、事故があってから通報までの間に少々タイムラグがあったようなんだが、その理由が気に掛かる。事故を目撃した通行人の話だと、既に救急車が来ていて担架で怪我人を運んでいたそうだ」
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