極道恋事情

一園木蓮

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謀反

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 一方、鐘崎らによる必死の捜索が行われていたその頃、周を拐った羅辰たちは再び逃走車を乗り換えるという周到ぶりで、東京から離れた西へと向かっていた。目指すは周家が関わる鉱山であるが、大陸へ渡るまでの道筋に今回は空路を使わず船での逃走を考えていたようである。
 いかにお膝元の香港から離れた東京での犯行といえど、まがりなりにも香港マフィアのトップである周隼の息子を拉致したのだから、事態が発覚すればすぐさまファミリーに報告がいくはずである。空路を使えば降り立った途端に網に掛けられるのは目に見えている。よって、貨物専用のタンカーに渡りをつけて、積荷に紛れて日本を脱出するという計画にしたわけだ。
 事故現場から救急車両を装った車で移動中に羅は部下たちに手早く指示を出していた。
「この車を乗り捨てるまでの間に周焔の着衣を引っ剥がすんだ! スーツもシャツも下着まで全部だぞ。早くしろ!」
「下着もですかい? 俺ラァそっちの趣味はねえんだけどなぁ」
 舎弟の男が苦笑しながらボヤいている。
「くだらねえこと言ってる暇はねえぞ! こいつらはいつ何があってもいいようにと自分の位置を示す機器を身に付けていないとも限らねえ。スマートフォンのGPSを潰しても安心しちゃいられねえんだ! いいから早く服を引っ剥がせ! 全裸にしたら先ずはこの薬を打ち込む」
 羅が注射器を取り出して舎弟たちが服を剥ぐのを待っている。
「お、兄貴! それが例のDAって薬ですかい?」
「そうだ。港で待たせている香山って野郎と落ち合う前に周焔の記憶を奪っておかねえとな! 怪しいモンがねえかよく確認したらこっちの服に着替えさせるんだ。早くしろ!」
 剥いだ周のスーツは全てこの車に置いていくようだ。
「うっは! すげえ……。ファミリーの背中にゃ龍の彫り物があるってのは聞いてましたが、ホントに入っていやがるぜ……! しかもなんて見事な!」
 すげえすげえを連発しながら舎弟が溜め息まじりでいる。
「感心してる場合じゃねえ! もうすぐ車を乗り換える場所に着いちまう! 見とれてねえで早くするんだ!」
「へえへえ、分かってますぜ。……って、うはぁ……こっちも立派っスねぇ! 顔もイケメンならイチモツも立派って、神様も不公平なことなさるよなぁ。どっちかひとつでもいいから俺にも分けて欲しかったね!」
 周の下着をずり下ろしながらまたもや驚きの声を上げている。そんな舎弟を横目に、羅は「チッ!」と小さな舌打ちと共にそっぽを向いてみせた。
「は! 気色悪ィこと抜かしてんじゃねえ! 野郎のブツなんぞ拝んだところで目が腐るだけだ。周焔ってのは男を嫁にしたとかいうが、正直俺には理解できんな!」
 羅は色事に関してもそれなりにお盛んであったが、相手にするのはすべて女性である。男が男を抱くなどとは到底理解できないというわけらしい。
 そんな折だ。またしても突如舎弟が大声を上げた。
「兄貴! ありましたぜ! ほら、この龍の彫り物の目玉のところになんだか怪しげな宝石が付いてますぜ!」
「どれ! 見せてみろ!」
 担架の上でゴロリと寝返りを打たせた背中を見れば、確かに龍の刺青の目玉部分に光る宝石が揺れている。
「こいつぁピアスだな。もしかしたらここにGPSが組み込んであるかも知れねえ」
 羅はすぐにそれを外すと、靴で踏み付けてから車内にあったペットボトルの飲み物の中へとそれを放り込んだ。
「よし、そろそろ到着だ。車を乗り換えたら港へ急ぐぞ! 早いとこ周焔にこれを着せるんだ」
 用意してきた着替え一式を舎弟に向かって放り投げる。
「了解です!」
 そうして救急車両を乗り捨てた一味はタンカーの待つ港へと向かった。ほどなくしてコンテナの中に車ごと乗り込んだ羅たちを積み込んで、タンカーはまんまと港を離れていったのだった。
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