極道恋事情

一園木蓮

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謀反

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 それらを急ぎ持ち帰って更なる捜索を続けることにする。汐留までの車中では鐘崎と源次郎がこれまでの経緯から想像できることを話し合っていた。
「服や所持品を全て残していったということは、簡単には身元を特定できないようにする為とも考えられますが、そうであれば敵は周さんを始末する心づもりでいるということでしょうか?」
 源次郎が訊く。
「だが、李や運転手を残しているわけだから、連れ去られたのはすぐに氷川――つまり周焔だと割れる。始末してどこかに埋めるか海へ放り込むだけならわざわざ背中のピアスを外す必要もなかろう」
 第一、周には衣服を剥いだところですぐに身元が分かるほどの特徴的な刺青が入っている。
「俺の予想だが、犯人たちは氷川に危害を加えるつもりはなく、何かの駒に使おうとしている可能性の方が強いんじゃねえかと」
 駒とは例えば身代金を要求する為の人質などという意味である。
「裸にした理由は身体のどこかにGPSを所持していないかどうかを探る為じゃねえか? おそらくは背中のピアスにそれが組み込まれていると察知して水に沈めたと考えれば、ヤツらが一番危惧しているのは行き先を知られることだ」
 確かに周ほどの人物が居なくなれば、汐留にいる側近はむろんのこと香港のファミリーもすぐに捜索に乗り出すことは敵にとっても想定内だろう。
「ただ不可解なのはこれら所持品の中に氷川のスマートフォンだけが残ってないということだ」
「とすると、目的はスマートフォンの中身ということでしょうか? 電源を落として犯人が持ち去ったのかも知れません」
「いや――、俺がおかしいと思うのはスマートフォンに付いているストラップの方だ」
「ああ、冰さんとお揃いだという組紐の物ですね?」
「ヤツらはわざわざ服をひん剥いてまで背中のピアスを外している。そこまで用心深い犯人がストラップのダイヤを見逃すはずもねえということだ。ペットボトルに沈められていたのは背中のピアスだけだった。同じような宝石にGPSが組み込まれているかも知れないと疑っても不思議はねえはずだ」
 確かにそうだ。GPSで辿られるのを阻止するつもりなら、組紐の先に付いているダイヤも当然外して置いていくはずである。
「スマートフォン自体にも位置情報は組み込まれています。二重にGPSが仕込まれている可能性は低いと踏んだのでしょうか」
「かも知れんな。問題は目的だ。氷川を拉致していったい何を企んでいやがる……。香港のファミリーの元にもまだ何の連絡も入ってねえようだし、目的は身代金じゃねえってことか」
「現在、台湾で任務中の僚一さんもすぐに香港の周ファミリーの元へ向かってくれるとのことでしたので、既に合流できている頃かと」
「ああ。親父にはファミリーと連携してもらい、ここ最近の香港周辺で不穏な動きがなかったかどうか探ってもらうとして……俺たちは氷川の行方の目星をつけたいところだが……」
「今のところ空路に張った網にはそれらしい動きは掛かっておりません。とすると、ヤツらはまだこの日本のどこかに潜んでいることになります」
「うむ……」
 恐らくは乗り捨てられていた車があった場所からまた別の車で逃走したことは確かだろうが、周辺には防犯カメラも皆無の山の中だ。
「丹羽の方でもあの山中から幹線道路へ出るルートを調べてくれているそうだから、いずれ目ぼしい車両が引っ掛かってくるはずだ。俺たちは引き続き空港と鉄道などに目を光らせるしかなかろう」
 そうして汐留へ戻ると、鐘崎らが持ち帰った周の衣服一式を目にした冰が、堪らずに泣き崩れてしまった。
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