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謀反
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電源は落ちてしまっているが、間違いなく周のスマートフォンだ。ストラップもちゃんと付いている。
「でかしたぞ冰君! やっぱり氷川は俺たちに向けてのメッセージを残してくれてたんじゃねえのか?」
わざわざシートの奥に突っ込んだところから見ても、単に落としたというわけではなさそうである。三人はすぐにそれを持ち帰って中を調べることにした。
汐留へ向かう車中で早速に車載の充電器へと繋いで起動を試みる。故障してはいない様で、しばらくすると無事に起動したことに皆は瞳を輝かせた。
「ロックが開くか?」
「ええ、白龍が俺の顔認証も組み込んでくれているので……」
「そっか! さすがは夫婦だな!」
紫月が感心する傍らで、
「開いた!」
冰が感嘆の声を上げた。
まずは冰の予測に従って録音が残されていないかを調べてみる。すると、やはりか。犯人のものと思われる会話が聞こえてきたのに三人は驚きの表情で互いを見合った。
シートの奥に突っ込まれていたこともあり、くぐもってはいるが、なんとか会話は聞き取れる。話しているのは広東語であった。
「やはり同業者か」
鐘崎の読みは当たっていたが、驚愕だったのはその内容である。
『お! 良かった……。兄貴、ノビちまってますぜ?』
『助手席は李狼珠だ。こいつが周焔で間違いねえな。急いで担架に乗せろ! 扱いは雑にするな。周焔に死なれたんじゃ元も子もねえ』
『兄貴、例の薬はどうします? 周焔が意識を取り戻す前に打っちまった方がいいんじゃねえですかい?』
『DAを打ち込むのは後だ! それよりスマートフォンを探して置いていくんだ! GPSを辿られたら厄介だ』
『それが……探してるんですがスマートフォンが見当たりません』
『そんなわけあるめえ! 胸の内ポケットあたりに入ってるはずだ!』
『全てのポケットを調べましたが見当たらないんです! 周焔はスマートフォンを所持していないんでしょうか?』
『チッ……! 管理は全部李にでも任せてるってのか……。まあいい。野次馬が寄って来る前にズラかるぞ!』
会話はこれで全てのようだ。その後は警察と救急隊が駆け付けて、李らを搬送する様子などが録音されていたものの、しばらくするとバッテリーが切れて電源が落ちたようだった。
拉致自体も驚愕であるが、何より驚くべきは犯人が口にした『DA』という薬物名である。以前、裏の三千世界に行った際に鐘崎自身も食らったことのある危険薬物だ。
「クソ……ッ! なんてこった! ヤツらは氷川にあれを盛ったってのか……!」
体験者である鐘崎はさすがに平常心ではいられないのか、拳を握り締めてはワナワナと震わせている。だが冰は逆に光明が射したとばかりの表情で、その瞳には活気が溢れていくかのような顔つきをしていた。
「例えDAという薬物が盛られたとしても白龍は生きている可能性が高いわけですよね? それなら希望はあります!」
つい先程までは涙に暮れていた瞳に希望を讃えて冰は声を震わせる。
大丈夫! 生きてさえいてくれればどんなことをしても助け出す……! 待っててね白龍!
会話にもある通り、犯人は周を殺す気がないことが明らかだ。今の冰にとってはそれだけで余りあるほどだった。
「でかしたぞ冰君! やっぱり氷川は俺たちに向けてのメッセージを残してくれてたんじゃねえのか?」
わざわざシートの奥に突っ込んだところから見ても、単に落としたというわけではなさそうである。三人はすぐにそれを持ち帰って中を調べることにした。
汐留へ向かう車中で早速に車載の充電器へと繋いで起動を試みる。故障してはいない様で、しばらくすると無事に起動したことに皆は瞳を輝かせた。
「ロックが開くか?」
「ええ、白龍が俺の顔認証も組み込んでくれているので……」
「そっか! さすがは夫婦だな!」
紫月が感心する傍らで、
「開いた!」
冰が感嘆の声を上げた。
まずは冰の予測に従って録音が残されていないかを調べてみる。すると、やはりか。犯人のものと思われる会話が聞こえてきたのに三人は驚きの表情で互いを見合った。
シートの奥に突っ込まれていたこともあり、くぐもってはいるが、なんとか会話は聞き取れる。話しているのは広東語であった。
「やはり同業者か」
鐘崎の読みは当たっていたが、驚愕だったのはその内容である。
『お! 良かった……。兄貴、ノビちまってますぜ?』
『助手席は李狼珠だ。こいつが周焔で間違いねえな。急いで担架に乗せろ! 扱いは雑にするな。周焔に死なれたんじゃ元も子もねえ』
『兄貴、例の薬はどうします? 周焔が意識を取り戻す前に打っちまった方がいいんじゃねえですかい?』
『DAを打ち込むのは後だ! それよりスマートフォンを探して置いていくんだ! GPSを辿られたら厄介だ』
『それが……探してるんですがスマートフォンが見当たりません』
『そんなわけあるめえ! 胸の内ポケットあたりに入ってるはずだ!』
『全てのポケットを調べましたが見当たらないんです! 周焔はスマートフォンを所持していないんでしょうか?』
『チッ……! 管理は全部李にでも任せてるってのか……。まあいい。野次馬が寄って来る前にズラかるぞ!』
会話はこれで全てのようだ。その後は警察と救急隊が駆け付けて、李らを搬送する様子などが録音されていたものの、しばらくするとバッテリーが切れて電源が落ちたようだった。
拉致自体も驚愕であるが、何より驚くべきは犯人が口にした『DA』という薬物名である。以前、裏の三千世界に行った際に鐘崎自身も食らったことのある危険薬物だ。
「クソ……ッ! なんてこった! ヤツらは氷川にあれを盛ったってのか……!」
体験者である鐘崎はさすがに平常心ではいられないのか、拳を握り締めてはワナワナと震わせている。だが冰は逆に光明が射したとばかりの表情で、その瞳には活気が溢れていくかのような顔つきをしていた。
「例えDAという薬物が盛られたとしても白龍は生きている可能性が高いわけですよね? それなら希望はあります!」
つい先程までは涙に暮れていた瞳に希望を讃えて冰は声を震わせる。
大丈夫! 生きてさえいてくれればどんなことをしても助け出す……! 待っててね白龍!
会話にもある通り、犯人は周を殺す気がないことが明らかだ。今の冰にとってはそれだけで余りあるほどだった。
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