極道恋事情

一園木蓮

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謀反

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「冰君は俺の経営しているという社で毎日業務に携わってくれているんだよな? 仕事は大変ではないか?」
「いえ、全然! 俺は元々大して役に立っているのかいないのかという感じでしたし、業務のことは李さんと劉さんがしっかり見てくださっているので。周さんがご復帰なされるまで俺も微力ですが少しでも李さんたちのお手伝いができるようにと思っています」
「そうか……。キミにも李さんや劉さんにも世話を掛けてすまないな」
「いいえー! 俺たちはこれまでいつも周さんに支えられて、散々お世話になってきたんです。今こそ恩返しする時です。それに社の仕事は楽しいですし!」
 周は『そうか』と言って、わずかだが笑みを見せた。
「冰君はどうして俺の秘書になったんだ? 俺たちはどうやって出会ったのかが知りたくてな」
 そんなことを訊いてくる周の言葉に驚きつつも、冰はにこやかに答えてみせた。
「俺は……その、すごい斜め滑りというか……周さんが温情を掛けてくださって、俺を秘書なんていうすごいポストにつけてくださったんですよ」
「斜め滑り?」
 面白いことを言う、とばかりに周はまたしても少しの笑みを誘われてしまった。
「そうなんです。本来だったら俺なんかこちらの会社に入社することさえ難しかったと思います。周さんの会社は商社ですし、社員さんたちは皆さん精鋭揃いで、とても俺なんかが近付けるような雰囲気ではないですよ。でも周さんはそんな俺を雇ってくださって。今でもどんなに御礼を言っても足りないくらいです」
 少し恥ずかしそうにしながらも、頭を掻いて笑う。やはりこの青年と話していると、ひどく心地が好いのが不思議だ。
「なあ、冰君……。キミは……俺が結婚していたという相手のことも知っているか?」
 医師の鄧が教えてくれなかったくらいだから、それこそこの青年に訊くのも野暮だろうとは思うのだが、どうしても聞かずにはいられなかった。彼のような青年が自分の結婚相手をどのように思っていたのかが気に掛かって仕方なかったからだ。
「周さんの結婚相手……。ええ、もちろん。存じていますよ」
「そうか……。実は昼間鄧先生にも同じことを訊いたんだが、教えてくれなくてな」
 周は『それはあなた自身で見つけるべきです』と言われたことを話して聞かせた。
「そうですか、鄧先生がそんなことを。でも……そうですね。それが一番いいのだと思います。例え周りの誰かが『この人があなたの奥さんですよ』と言ったところで、周さんがそう思えなければ意味がありませんし。それに……周さんの伴侶さんは周さんのことをいつでも何処にいても一番大切に想っています。それだけは信じてあげてください」
「……そうか。なあ冰君。冰君から見て俺の伴侶はどんなヤツだった? いいヤツだったか?」
「どんな……。うん、えっと……」
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