714 / 1,212
謀反
51
しおりを挟む
それとも自分が盛られた薬物というのは、いずれ時間が経てばいつかは必ず切れる時が来ると分かっているから、それまで待とうということなのだろうか。
あの鐘崎も同じ薬を盛られたが、記憶はきちんと戻ったという。彼より多量に盛られた分、記憶が戻るまでの時間も長く掛かるが、それも残り少なくなってきているのだろうか。
確かに、自分自身でもここへ来た最初の頃と比べると、大分気力も戻ってきたように思う。
(あと少しの辛抱ということか……)
だがやはり戸籍を確かめたいとも思う。様々な気持ちに揺れながら、周はウトウトと眠りについたのだった。
◇ ◇ ◇
周が秘書の冰への想いに悩みながらも、自分の伴侶を確かめる為に戸籍を調べようかと迷っていた頃――。
香港の家族から少々意外な情報が飛び込んできて、周はもとより李や冰らも酷く驚かされることとなったのはそんな折だった。
なんと例の鉱山で周を拉致した羅辰らの遺体が発見されたというのだ。
あの後、各所で落盤が見つかり、ロナルドことロンたちもその修復作業に追われていたようだが、そんな中で崩れた岩の下から倒れている数人が発見されたらしい。坑道内は湿気も多く、あれからひと月以上も時間が経っていたこともあって、その損傷具合は無残なものだったようだ。
すぐに香港の周隼の元へと連絡が入り、DNA鑑定などを行った結果、羅辰とその一味であると確定されたとのことだった。
おそらくは周を置き去りにした後、道に迷って落盤に巻き込まれたものと思われる。自業自得ではあるが、長年ファミリーに属していた者たちの無残な末路に、隼らはやはり驚きを隠せなかったようだ。
ただ、不思議なのはその中に香山の姿がなかったということであった。
報告書類に目を通しながら李が亡くなった者たちの氏名を確認している。
「身元が分かったのは全てファミリーに属していた者たちのようですね。ではあの香山という男は無事に逃げ延びたということでしょうか……」
確かに羅辰たち一行は周と香山を置き去りにして逃げたということだったし、香山自身には冰も坑道内で遭遇していた。彼にはロンが出口を教えたはずだが、そこから先はまた道に迷ったとも考えられる。
「香山さん……無事に逃げ延びてくれていればいいですが」
鉱山でも周を置き去りにして逃げた――例えそのような男に対しても、冰は無事を祈る言葉を口にする。自業自得とはいえ、罪を恨んでも『あんなヤツ死んで当然だ』などとは決して思わないのだろう彼のやさしさが感じられて、周はそんなところにも強く惹かれずにはいられなかった。
やはり戸籍を確かめるのはやめるべきか――ふとそんな思いが過ぎる。
嫁が誰であろうと、この想いを全てこの冰に打ち明けてみたい。包み隠さず、彼に惹かれていることや、彼とは別の誰かが嫁だった場合は酷く動揺してしまうだろうこと、揺れ動く様々な気持ちの全てを冰に打ち明けて、そして彼の意見を聞いてみたい。二人でとことん話し合ってみたい。
冰にとっては迷惑かも知れないが、周はそんな気持ちが抑えられずにいた。
あの鐘崎も同じ薬を盛られたが、記憶はきちんと戻ったという。彼より多量に盛られた分、記憶が戻るまでの時間も長く掛かるが、それも残り少なくなってきているのだろうか。
確かに、自分自身でもここへ来た最初の頃と比べると、大分気力も戻ってきたように思う。
(あと少しの辛抱ということか……)
だがやはり戸籍を確かめたいとも思う。様々な気持ちに揺れながら、周はウトウトと眠りについたのだった。
◇ ◇ ◇
周が秘書の冰への想いに悩みながらも、自分の伴侶を確かめる為に戸籍を調べようかと迷っていた頃――。
香港の家族から少々意外な情報が飛び込んできて、周はもとより李や冰らも酷く驚かされることとなったのはそんな折だった。
なんと例の鉱山で周を拉致した羅辰らの遺体が発見されたというのだ。
あの後、各所で落盤が見つかり、ロナルドことロンたちもその修復作業に追われていたようだが、そんな中で崩れた岩の下から倒れている数人が発見されたらしい。坑道内は湿気も多く、あれからひと月以上も時間が経っていたこともあって、その損傷具合は無残なものだったようだ。
すぐに香港の周隼の元へと連絡が入り、DNA鑑定などを行った結果、羅辰とその一味であると確定されたとのことだった。
おそらくは周を置き去りにした後、道に迷って落盤に巻き込まれたものと思われる。自業自得ではあるが、長年ファミリーに属していた者たちの無残な末路に、隼らはやはり驚きを隠せなかったようだ。
ただ、不思議なのはその中に香山の姿がなかったということであった。
報告書類に目を通しながら李が亡くなった者たちの氏名を確認している。
「身元が分かったのは全てファミリーに属していた者たちのようですね。ではあの香山という男は無事に逃げ延びたということでしょうか……」
確かに羅辰たち一行は周と香山を置き去りにして逃げたということだったし、香山自身には冰も坑道内で遭遇していた。彼にはロンが出口を教えたはずだが、そこから先はまた道に迷ったとも考えられる。
「香山さん……無事に逃げ延びてくれていればいいですが」
鉱山でも周を置き去りにして逃げた――例えそのような男に対しても、冰は無事を祈る言葉を口にする。自業自得とはいえ、罪を恨んでも『あんなヤツ死んで当然だ』などとは決して思わないのだろう彼のやさしさが感じられて、周はそんなところにも強く惹かれずにはいられなかった。
やはり戸籍を確かめるのはやめるべきか――ふとそんな思いが過ぎる。
嫁が誰であろうと、この想いを全てこの冰に打ち明けてみたい。包み隠さず、彼に惹かれていることや、彼とは別の誰かが嫁だった場合は酷く動揺してしまうだろうこと、揺れ動く様々な気持ちの全てを冰に打ち明けて、そして彼の意見を聞いてみたい。二人でとことん話し合ってみたい。
冰にとっては迷惑かも知れないが、周はそんな気持ちが抑えられずにいた。
21
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる