極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
719 / 1,212
謀反

56

しおりを挟む
「そうだ! こうしちゃいられない! 皆さんに知らせなきゃ!」
 冰は感激の涙を拭うと、パチクリと大きな瞳を見開いた。
「ねえ白龍、頭が痛いとかはない? そうだ、素人判断は良くないよね! 鄧先生に診てもらおう! 真田さんや香港のお父様、鐘崎さんと紫月さんにも知らせなきゃ!」
 まるで上へ下への大はしゃぎでいる。そういえば冰の記憶が戻った時も周はまるで少年のようにはしゃいだものだ。今は逆だが、リアクションもそっくりの二人はやはり似た者夫婦なのだ。
「では私は鄧先生に連絡しておきます。老板と冰さんはお邸に戻られて真田さんを安心させてあげてください!」
 李も嬉しそうに声を弾ませる。
「ええ、それじゃお言葉に甘えてちょっと失礼させていただきます!」
 冰は社の方を李らに任せると、
「白龍、行くよ!」
 周の手を引っ張る勢いで邸へと向かった。
「おいおい、そう急くな」
 連絡通路を小走りする冰に手を引かれながら、周は嬉しそうだ。高揚の為か頬を真っ赤に染めながら息を切らす勢いで早歩きする横顔を感慨深そうに見つめては瞳を細める。そんな中、周は突如として歩を止めた。
「――? 白龍? どしたの?」
 あまりにも急かし過ぎたせいで、どこか具合でも悪くしたのかと焦る冰を周はヒョイと抱き上げた。
「わッ……ったっとー! えッ!? 白龍、な、なにー!?」
 目を白黒させて驚く冰をそのままグイと片手で肩に担ぎ上げると、悠々と通路を歩き出しながら周は笑った。
「お前には例の鉱山でおぶってもらったからな。その礼を込めてのお返しだ。今度はちゃんと俺が担ぎ上げてやりてえと思ってな」
「ひええー、白龍……! き、気持ちは嬉しいけど……いくら何でもこれじゃ……は、恥ずかしいよー!」
「恥ずかしがることはねえ。亭主が嫁を抱き上げるのは当然だろ?」
「そ、そーゆー問題じゃないって……! 誰かに見つかったら恥ずかしいでしょー!」
「誰に見つかるってんだ。ここはペントハウスの通路だぞ? そう簡単に見えはせん!」
 不敵な笑みも話し方も、まさに周そのものだ。
「それにな――俺が今こうしたくて仕方ねえんだ。少しでもお前に触れていたい。俺にできることは何でもしてやりたい。今思い付くのはこんなことだけってのが情けねえが……亭主に花を持たせると思って担がれていてくれ」
「白龍……」
「ありがとうな、冰。愛してるぜ――」

 心から――!

「んもー、んもうー! 白龍ったらさ! 思い出したと途端にそんなカッコいいこと言うなんて反則……!」
 また再び潤みそうになった目頭を押さえながら、冰は嬉しさのあまり脚をバタつかせてはドンドンと周の背中を叩いて、心から嬉しそうに笑ったのだった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...