極道恋事情

一園木蓮

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謀反

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「冰……」
 それは本当か? といったように瞳をパチクリと見開いては、穴が開くほど真剣に見つめてしまう。
「ホントだよ。白龍がこの世の誰よりも俺を愛してくれてるって……ちゃんと分かってる。それに……俺も同じ。俺にも白龍しかいない。何があっても、仮に白龍の気持ちが俺から離れちゃったとしても……俺の好きな人は白龍しかいない……。あなたの幸せが俺の幸せだもの」
「冰……」
 そういえば鐘崎が言っていたっけ。もしもお前が嫁以外の――別の誰かに心を寄せたとして、お前の幸せがそこにあるならヤツは黙って身を引く。お前の嫁はそういうヤツだ――と。
 自分自身の幸せよりも愛する者の幸せを願うなど、話の上では美しいが、実際には想像し難いくらい辛いことだろう。だが、この冰ならば本当にそれを体現してしまうかも知れない。それほどまでに想われていることがまさに奇跡だ。
 周は誠、この冰という変え難い存在に出逢えたことを幸せに感じていた。身体中が震えるほどに有り難くて幸せで、堪えきれず声に出して泣いてしまいたいくらいの高揚感が行きどころを失ってしまいそうだ。
「俺も同じだ……。お前のことを心底……どうやっても伝えきれねえくらい愛している……! だが俺は……お前よりも人間ができてねえんだな……」

 お前が……俺以外の誰かに心を寄せたりしたら、お前の幸せを願って身を引くなんて芸当はおそらくできないだろう。なりふり構わず相手に挑んで退けてしまうかも知れない……。
 こんな身勝手な俺だ……。てめえ自身よりもお前が大事だなどと言いながら、結局はてめえの自我を押し通してお前を手に入れようとするだろう。

「こんな亭主だ。独占欲が強くて、ガキで……どうしょうもねえ」
「白龍ったら。そんなことない、白龍は俺にとって世界で一番の、最高の旦那様だよ!」
「冰……冰……!」

 愛している。
 愛していて欲しい。何があっても絶対に離れないと云って欲しい。何度でも云って欲しい……!

「大丈夫。白龍の考えてること、俺を想ってくれる気持ち、全部分かってる。だって俺はあなたの、この世で唯一無二の奥さんだもん」

 あなたの元を離れない……! 生涯、永遠に!

「そうか……。そうか。ありがとうな、冰……!」

 お前の側を離れない! こんな亭主だが、お前を想う気持ちだけは嘘じゃない。神かけて誓う。この命ある限り、全身全霊でお前だけを――

 あなただけを――

 愛し抜くと――!

 重ねた肌の温もりを甘く激しく擦り合わせ、絡み合せて、それでも足りないこの熱い想いを涙に溶かして、二人は気が遠くなるほどに求め合い、睦み合い、そして溶け合ったのだった。



◇    ◇    ◇


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