732 / 1,212
幸せのクリスマス・ベル
2
しおりを挟む
「ではお店はもしかしていつもの宝飾店で?」
「そうそう! あそこは革小物とかも扱ってるしさ。好みに合わせてオーダーも受けてもらえるから、それこそオリジナルっつか、世界にたったひとつっていうデザインの物にもできるし」
その宝飾店というのは、以前に新店舗がオープンした際に襲撃事件のあったところである。あの時は紫月らも周と鐘崎と一緒にオープニングレセプションへ呼ばれていたし、すぐに加勢する体制が敷けたわけだ。ちょうど昨年の今頃のことだった。
「そういやあれからもう一年かぁ。早えなぁ」
去年のクリスマスはその事件の直後だったこともあり、共に解決に奔走してくれたクラブ・フォレストの里恵子らも交えて汐留の周邸でパーティを行ったものだ。その際に旦那衆二人から豪華なクリスマスプレートを贈られたわけだが、それも例の宝飾店で選んでくれた物だった。
「今日行くのは銀座にある本店の方な!」
事件があったのは丸の内にオープンした店舗の方だったが、その時の支配人が本店へと栄転してきているらしい。当時、彼がすぐに鐘崎組に助力を依頼したお陰で、一人の負傷者も出さず解決に導いた功績を買われてのことだったそうだ。
そうして店に着くと、すぐにその支配人が出てきて応対してくれた。
「鐘崎様、周様! その節はたいへんお世話になりました! あの後もご主人様方にもたいへんご贔屓にしていただいて」
支配人もよく覚えていてくれて、手厚い対応で迎えてくれる。紫月も冰も既に入籍しているので、鐘崎様、周様と呼ばれて当然なのだが、冰などはすっかり頬を赤らめて恥ずかしそうにしている。しかも今日はその周とは別行動なので、こうして外で改めて『周様』と呼ばれることにドキドキしてしまうらしい。
「ん? どした冰君? 顔真っ赤にして」
紫月が首を傾げると、冰はますます頬を朱に染めながら何とも可愛らしいことを口走ってみせた。
「ええ、その……俺も”周”なんだなって思ったら……すごく嬉しいというか、幸せで……。信じられないくらいだなぁって思って」
モジモジと照れている仕草が微笑ましくて、紫月も源次郎も思わず破顔するほど笑みを誘われてしまった。
思えばつい先日まで周の記憶喪失という一大事を懸命に支えてきたこの冰だ。無事に記憶も戻った今、改めて平穏な幸せを噛み締めているのだろう。周姓であることをこんなにも喜んでいる姿は本当に健気で可愛らしく、見ているだけで紫月らも心温まる思いに満たされるのだった。
もしも周がここにいてこんな姿を見たら、それこそ大感激するだろう。今この場にいないのが残念に思えるほどだった。
(こりゃあ後で氷川へのいい土産話になりそうだな!)
紫月はそんな想像をしながら心温めるのだった。
「そうそう! あそこは革小物とかも扱ってるしさ。好みに合わせてオーダーも受けてもらえるから、それこそオリジナルっつか、世界にたったひとつっていうデザインの物にもできるし」
その宝飾店というのは、以前に新店舗がオープンした際に襲撃事件のあったところである。あの時は紫月らも周と鐘崎と一緒にオープニングレセプションへ呼ばれていたし、すぐに加勢する体制が敷けたわけだ。ちょうど昨年の今頃のことだった。
「そういやあれからもう一年かぁ。早えなぁ」
去年のクリスマスはその事件の直後だったこともあり、共に解決に奔走してくれたクラブ・フォレストの里恵子らも交えて汐留の周邸でパーティを行ったものだ。その際に旦那衆二人から豪華なクリスマスプレートを贈られたわけだが、それも例の宝飾店で選んでくれた物だった。
「今日行くのは銀座にある本店の方な!」
事件があったのは丸の内にオープンした店舗の方だったが、その時の支配人が本店へと栄転してきているらしい。当時、彼がすぐに鐘崎組に助力を依頼したお陰で、一人の負傷者も出さず解決に導いた功績を買われてのことだったそうだ。
そうして店に着くと、すぐにその支配人が出てきて応対してくれた。
「鐘崎様、周様! その節はたいへんお世話になりました! あの後もご主人様方にもたいへんご贔屓にしていただいて」
支配人もよく覚えていてくれて、手厚い対応で迎えてくれる。紫月も冰も既に入籍しているので、鐘崎様、周様と呼ばれて当然なのだが、冰などはすっかり頬を赤らめて恥ずかしそうにしている。しかも今日はその周とは別行動なので、こうして外で改めて『周様』と呼ばれることにドキドキしてしまうらしい。
「ん? どした冰君? 顔真っ赤にして」
紫月が首を傾げると、冰はますます頬を朱に染めながら何とも可愛らしいことを口走ってみせた。
「ええ、その……俺も”周”なんだなって思ったら……すごく嬉しいというか、幸せで……。信じられないくらいだなぁって思って」
モジモジと照れている仕草が微笑ましくて、紫月も源次郎も思わず破顔するほど笑みを誘われてしまった。
思えばつい先日まで周の記憶喪失という一大事を懸命に支えてきたこの冰だ。無事に記憶も戻った今、改めて平穏な幸せを噛み締めているのだろう。周姓であることをこんなにも喜んでいる姿は本当に健気で可愛らしく、見ているだけで紫月らも心温まる思いに満たされるのだった。
もしも周がここにいてこんな姿を見たら、それこそ大感激するだろう。今この場にいないのが残念に思えるほどだった。
(こりゃあ後で氷川へのいい土産話になりそうだな!)
紫月はそんな想像をしながら心温めるのだった。
23
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる