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幸せのクリスマス・ベル
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「うっはぁー、すげえ……!」
「まるでビルみたいなケーキ!」
紫月も冰も目をまん丸くして、すげえすげえを繰り返している。
しかもよくよく見ればタワーとタワーの間には中庭もあって、クリスマスツリーのオブジェにはイルミネーションまで煌めいている。
「これ、もしかして真田さんが取り寄せてくださったもみの木のミニチュアですか?」
「ってことは、このケーキはここのビルを模ってるのか?」
冰と紫月が額をくっ付けるようにして覗き込んでいる。
「正解だ。今年は氷川と冰君にとって大変な年だったしな。それを乗り越えた二人の愛情を讃えてこのツインタワーをモチーフにしたんだ」
鐘崎も得意げだ。そんな友の心遣いに、周もまた感慨深い思いで喜びをあらわにしたのだった。
そして周の選んだシャンパンが開けられ乾杯の用意が整ったところで、旦那衆二人から昨年同様のクリスマスプレートが贈られた。
「うっはぁ……すげえ! 毎年一枚ずつ増やしていくとか言ってたけど、まさかホントに今年も揃えてくれるなんてさ」
「去年のとはまた彫ってある絵柄が違うんだね!」
だが埋め込んである宝石は一緒だ。高価な物というのももちろんだが、紫月も冰もこうして心尽くしをしてくれる亭主たちに感激を通り越して感動というくらいに胸を震わせたのだった。
「そいじゃ乾杯の前に俺たちからも……!」
「ですね!」
嫁二人が面映ゆい表情で頷き合い、テーブルの下に隠していた袋からプレゼントを取り出した。
「遼ぉー」
「白龍ー」
「メリークリスマス!」
とびきりの笑顔と共に差し出されたのはキラキラと光る包装紙に包まれた同じ大きさのギフトボックス。鐘崎への贈り物には紫色のリボンが掛けられていて、アクセントにヒイラギの葉っぱとクリスマスベルが付いている。周の方には真っ白のリボンにトナカイとサンタクロースの小さなぬいぐるみが括り付けられてあった。
「まさか、俺たちに……か?」
「おいおい、いいのか?」
鐘崎も周も驚き顔で瞳を見開いている。
「俺と冰君からの愛の証だ!」
「気に入ってもらえるといいなぁ」
早く開けてみて! と、期待顔の嫁たちに、旦那二人は感激の面持ちで丁寧に包みを解いた。
出てきたのは先日選んだお揃いのシガーケースだ。
「……! こいつぁ……」
「なんて粋な……!」
互いの手にしている物を見比べながら、
「俺とカネとお揃いだな!」
「柄違いか! 石も付いてる。紫月と冰の色だな?」
二人で顔を見合わせては声を震わせる。その表情を見ただけでも気に入ってくれたのが分かるようだ。鐘崎は破顔するほどに感激しているし、周などは今にも涙ぐみそうな勢いだ。
「気に入ってくれたみてえな?」
「煙草は俺が毎朝セットするからね!」
紫月と冰も嬉しそうだ。この贈り物を決めるのに付き合った源次郎はもちろんのこと、僚一と飛燕の父親たちも微笑ましそうにカップルたちの様子を眺めていた。
「そんじゃ乾杯すっか! 発声は……氷川だな!」
紫月がグラスを高々と掲げてとびきりの笑顔を見せる。ほんの少し前までは記憶を失うという難儀を乗り越えた周に華を持たせようという心意気に、満場一致で拍手が湧いた。
「それじゃ僭越ながら。思い起こせば今年は地下の三千世界での事件から始まって、カネも俺も薬物で記憶を失くしたりと苦難があった。冰が拉致されて九州に行ったのも今年だったな。そんな様々な苦難でも皆の惜しみない助力と厚情でなんとか無事に乗り越えることができた。改めてこの絆に感謝でいっぱいだ」
周は深々と頭を下げると、天高くグラスを掲げて、強い意志を伴った美声を轟かせた。
「これからも皆の健康と更なる俺たちの絆を祈念して乾杯!」
「乾杯ー!」
「メリークリスマス!」
賑やかな掛け声と同時に真田がクリスマスにぴったりのバックミュージックを流してくれた。
食事は豪華なフレンチのフルコースだ。汐留の高楼から見下ろす街の灯りが宝石箱のように煌めいて見事である。朗らかなおしゃべりと笑い声の絶えない中、一同は暖かいクリスマスのひと時を堪能したのだった。
「それでは皆様、お待ちかねのデザートのお時間ですぞ!」
メインディッシュが済む頃合いを見計らって真田がケーキを持ってやって来た。お披露目の後に一旦冷蔵庫に預っていたものである。
「まるでビルみたいなケーキ!」
紫月も冰も目をまん丸くして、すげえすげえを繰り返している。
しかもよくよく見ればタワーとタワーの間には中庭もあって、クリスマスツリーのオブジェにはイルミネーションまで煌めいている。
「これ、もしかして真田さんが取り寄せてくださったもみの木のミニチュアですか?」
「ってことは、このケーキはここのビルを模ってるのか?」
冰と紫月が額をくっ付けるようにして覗き込んでいる。
「正解だ。今年は氷川と冰君にとって大変な年だったしな。それを乗り越えた二人の愛情を讃えてこのツインタワーをモチーフにしたんだ」
鐘崎も得意げだ。そんな友の心遣いに、周もまた感慨深い思いで喜びをあらわにしたのだった。
そして周の選んだシャンパンが開けられ乾杯の用意が整ったところで、旦那衆二人から昨年同様のクリスマスプレートが贈られた。
「うっはぁ……すげえ! 毎年一枚ずつ増やしていくとか言ってたけど、まさかホントに今年も揃えてくれるなんてさ」
「去年のとはまた彫ってある絵柄が違うんだね!」
だが埋め込んである宝石は一緒だ。高価な物というのももちろんだが、紫月も冰もこうして心尽くしをしてくれる亭主たちに感激を通り越して感動というくらいに胸を震わせたのだった。
「そいじゃ乾杯の前に俺たちからも……!」
「ですね!」
嫁二人が面映ゆい表情で頷き合い、テーブルの下に隠していた袋からプレゼントを取り出した。
「遼ぉー」
「白龍ー」
「メリークリスマス!」
とびきりの笑顔と共に差し出されたのはキラキラと光る包装紙に包まれた同じ大きさのギフトボックス。鐘崎への贈り物には紫色のリボンが掛けられていて、アクセントにヒイラギの葉っぱとクリスマスベルが付いている。周の方には真っ白のリボンにトナカイとサンタクロースの小さなぬいぐるみが括り付けられてあった。
「まさか、俺たちに……か?」
「おいおい、いいのか?」
鐘崎も周も驚き顔で瞳を見開いている。
「俺と冰君からの愛の証だ!」
「気に入ってもらえるといいなぁ」
早く開けてみて! と、期待顔の嫁たちに、旦那二人は感激の面持ちで丁寧に包みを解いた。
出てきたのは先日選んだお揃いのシガーケースだ。
「……! こいつぁ……」
「なんて粋な……!」
互いの手にしている物を見比べながら、
「俺とカネとお揃いだな!」
「柄違いか! 石も付いてる。紫月と冰の色だな?」
二人で顔を見合わせては声を震わせる。その表情を見ただけでも気に入ってくれたのが分かるようだ。鐘崎は破顔するほどに感激しているし、周などは今にも涙ぐみそうな勢いだ。
「気に入ってくれたみてえな?」
「煙草は俺が毎朝セットするからね!」
紫月と冰も嬉しそうだ。この贈り物を決めるのに付き合った源次郎はもちろんのこと、僚一と飛燕の父親たちも微笑ましそうにカップルたちの様子を眺めていた。
「そんじゃ乾杯すっか! 発声は……氷川だな!」
紫月がグラスを高々と掲げてとびきりの笑顔を見せる。ほんの少し前までは記憶を失うという難儀を乗り越えた周に華を持たせようという心意気に、満場一致で拍手が湧いた。
「それじゃ僭越ながら。思い起こせば今年は地下の三千世界での事件から始まって、カネも俺も薬物で記憶を失くしたりと苦難があった。冰が拉致されて九州に行ったのも今年だったな。そんな様々な苦難でも皆の惜しみない助力と厚情でなんとか無事に乗り越えることができた。改めてこの絆に感謝でいっぱいだ」
周は深々と頭を下げると、天高くグラスを掲げて、強い意志を伴った美声を轟かせた。
「これからも皆の健康と更なる俺たちの絆を祈念して乾杯!」
「乾杯ー!」
「メリークリスマス!」
賑やかな掛け声と同時に真田がクリスマスにぴったりのバックミュージックを流してくれた。
食事は豪華なフレンチのフルコースだ。汐留の高楼から見下ろす街の灯りが宝石箱のように煌めいて見事である。朗らかなおしゃべりと笑い声の絶えない中、一同は暖かいクリスマスのひと時を堪能したのだった。
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