極道恋事情

一園木蓮

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幸せのクリスマス・ベル

9(幸せのクリスマス・ベル 完結)

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「鐘崎の坊っちゃま、紫月さん、焔の坊っちゃま、冰さん、どうぞこちらへ。クリスマスの儀式でございますぞ」
 そう言ってカップルたちにナイフを手渡す。恒例のクリスマスケーキ入刀である。元々は鐘崎がまだ紫月への想いを打ち明ける前にいつか結ばれることを夢見てクリスマスの時に行ったという入刀だが、今でもその時の想いを大事にして、すっかり儀式として定着しつつあるのだ。
 鐘崎夫婦にとってはむろんのこと、周と冰にとっても無事にこの瞬間を迎えられることは感慨深いものであった。
 二組のカップルたちがそれぞれ互いの伴侶を見つめながら照れ臭そうに笑顔を見せる。
「うー、カットしちまうのもったいねえなぁ」
 紫月が躊躇している傍らで、
「切らなきゃいつまで経っても食えんだろうが」
 いつぞやのクリスマスの時と同じ台詞を繰り出す鐘崎に、両親たちが当時を懐かしむ顔つきで穏やかな笑みを讃えている。
「よし、それじゃいくぞ」
 重ねられた手にグイと力が込められ無事に入刀が済むと、皆から拍手が湧き起こった。もちろん味の方も絶品だったのは言うまでもない。
「よーし、ケーキを食ったら皆んなで中庭のツリーの前で記念撮影だ」
「わぁーい、やったー!」
 外は真冬の寒さだが、熱々のカップルたちにとってはそれもまた醍醐味である。寒いからぴったりとくっ付いていられるし、ポケットの中で手を繋ぐのも新鮮といえる。
「羨ましいことだな。我々も若かりし頃を思い出す」
「本当にな。仲睦まじい姿を見ているだけで、こっちもいい老後が過ごせそうだ」
 父親たちも頼もしげに瞳を細めて笑う。
「よし、冰と一之宮。ここに来て二人でこの紐を引っ張ってみろ」
 周と鐘崎がツリーの真下で手招く。
「え、なになにー?」
「しっかしでっけえ木だなぁ。去年見た時より一回りデカく育ってる!」
 言われた通りに二人で紐を引っ張ると、ツリーのてっぺんに飾られた大きなベルが真冬の夜空でリンリンと心地の好い音を立てた。
「うわぁ! クリスマス・ベルだー!」
「すっげ! オシャレなぁ」
 皆でベルを見上げたと同時に、天高くそびえる社のツインタワーの壁面に巨大なイルミネーションで模った光のツリーが浮かび上がった。
「おわー! すげえ!」
「うわ……これ……」
 目をまん丸くして上を見上げる二人の肩を抱き寄せながら、周と鐘崎の旦那組が誇らしげな笑みを見せた。
「カネと相談してな」
「俺らも飾り付けを手伝ったんだ」
 いつの間にという表情ながら、光のツリーを見上げる冰と紫月の鼻が感激の涙を堪えてか真っ赤に染まった。
「綺麗……。こんなに大きいツリー……初めて見たよ。飾り付け大変だったでしょうに……!」
「ホントだな! ちょっ……感激し過ぎてやべえ……」
 真っ赤な鼻を白い吐息で隠すようにしながら、冰はハンカチで瞼を押さえ、紫月は袖口で照れ臭そうにグイと涙を拭った。
「喜んでもらえたようだな」
「二人共トナカイみてえだ。可愛いツラ見せてくれて……」
「俺たちの方が感激だ」
「本当にな」
 ここ半月の間、嫁たちに内緒でこっそりと飾り付けていたものだ。ビルの屋上からライトのコードを垂らしたり、外階段の踊り場で命綱を付けてツリーの形になるようにコードを括り付けたりと、工事を担当してくれる業者と共に周と鐘崎も真冬の寒空の下で目一杯汗をかいた甲斐があった。
「白龍……ありがとうね。こんな素敵なプレゼント……俺、こんなに幸せでいいのかなって思うよ」
「遼、サンキュな……! 俺、今日のこと一生忘れねえわ!」
 嫁たちの感激に旦那二人の心も熱くなる。抱き寄せていた彼らの肩をそれぞれ更に両の腕で抱き包んで、すっぽりと懐に抱え込んだ。
 そんなカップルたちを讃えるように父親たちや真田、源次郎らから大きな拍手喝采が巻き起こる。
 今年もまた、幸せなクリスマスの夜が賑やかに更けていったのだった。

幸せのクリスマス・ベル - FIN -
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