極道恋事情

一園木蓮

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カウント・ダウンを南国バカンスで

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「うわ……あったかい……!」
 というよりも蒸す。ジェットを降りた途端に身体中を包み込んだ南国の空気に、冰が目を白黒させていた。
「やはり蒸し暑さが日本とは違うからな。冰は初めてだったな」
 周がクスっと笑む。
「うん、初めて。なんだか……世界って広いんだなぁって思っちゃう」
 冰は香港で生まれ育って以来、海外に出たのは汐留を訪ねたのが初めてだし、つまり香港と日本の他にはマカオと鉱山にしか行っていない。もちろん南国ハワイも初体験だし、見るもの感じるものがすべて新鮮な驚きに思えるわけだ。周にとってはワクワクとしたその可愛らしい表情を眺めていられることが、まさに醍醐味といったところであった。
 税関を通過すると、歓迎の一環かハワイアンダンスを踊りながら現地の女性たちが一人一人の首にレイを掛けてくれた。
 一番最初にゲートをくぐった源次郎と真田の二人が、若い女性からレイを貰い、それと同時にチュッと頬にキスをされる。李や鄧らも同じくハグとキスをされているのを見て、さすがに外国だなと実感させられる。暢気にそんなことを思っていた冰は、自分の番が来てキスをされると、ポッと頬を染めた。女性にキスされるなど初めてのことだからだ。
 ドキマギとしながらも、ふと後ろを振り返ると、ちょうど周がレイを受け取っているところだった。背の高い彼にレイをかけるのに女性の方ではクッと背伸びをして、ハグも両腕を目一杯伸ばして抱き付く勢いでいる。それらを気遣ってか、キスをされる時には彼女らがやりやすいように膝を折って頬を差し出してやっている。女性は感激の面持ちで、『キャッ!』と言いながら満面の笑みを浮かべ、長身の周へと抱き付くようにしながらその頬に唇を寄せた。
 続いてやって来た鐘崎も同じように膝を折ってキスをもらっている。そんな姿を目にした冰は、ドキドキと心拍数が逸り出すのに戸惑ってしまった。
 思えば周が女性とハグをしたり、頬とはいえどキスをされたり抱き付かれているのを見たのは初めてのことである。今は全員が同じように歓迎のイベントでキスされたわけだから、そこにドキドキすることもないのだが、こうして目の前で女性と抱き合うというビジュアルを体験してしまうと、やはり平常心ではいられないわけだ。
 といっても、冰にとっては嫉妬という感情ではなく、格好いいという認識だったようだ。
 ハグの動作もキスを受ける仕草も非常にスマートで、見ていて素敵だと思うのだ。相手の女性の方も周や鐘崎にハグする時は、真田や源次郎にした時とは明らかに違うといった表情で嬉しそうだ。きっと心の中では『いい男だわ!』と思っていることだろう。
 そんな”イイ男”が自分の亭主だと思うと、嬉し恥ずかし何ともいえない高揚感に包まれる冰であった。
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