745 / 1,212
カウント・ダウンを南国バカンスで
6
しおりを挟む
「白龍……あ……りがと、その……」
「すまなかった。怖い思いをさせちまったな」
「う、ううん……。俺、その……ああいうの初めてで……ちょっとびっくりした」
周は冰の頭ごと引き寄せると、すっぽりと懐へと抱き包んだ。
「あの……俺、さっきの白龍の真似してハニー……じゃなかった。ダーリンがいるからって言ったんだけど、通じなくてさ」
やっぱり場慣れしてないからダメダメだねと眉を八の字に寄せた笑顔を見せる冰に、思ったよりもショックを受けていないのだろうことが窺えてホッと胸を撫で下ろす。
「真田さんと紫月さんもありがとうございます。俺ももっと精進しなきゃ」
「いえいえ、ご無事で何よりです。しかしこの真田も捨てたものではございませんな。まさか冰さんのダーリンと間違えられるとは」
その言葉にいち早く反応したのは周だ。
「――ダーリンと間違えられただと?」
なんとも言いようのない表情で眉根を寄せてみせる。
「そうなんですよ、坊っちゃま! 聞いてくださいまし! あの方たちは私を冰さんのいい人だと思われたようでございますよ。焦りましたが、今になって考えると褒め言葉と受け取っておくのも悪くないかと」
少々自慢げに胸を張った真田に、ドッと笑いが巻き起こる。結果として何事もなかったことだし、周もやれやれと苦笑させられるのだった。
「まあ、側を離れた俺が悪い。なんといっても喫煙スペースが限られているからな。ここで吸えりゃ万々歳なんだがな」
せっかくクリスマスのプレゼントで貰ったシガーケースを持参して来たというのに、公の場で自慢できないのが残念だと肩を落とす。
「真田も一之宮もすまなかったな。お前たちが居てくれたお陰で助かった」
周は詫びも兼ねて明日か明後日にでも買い物三昧と洒落込むかと言ってニヒルに笑った。
その後、源次郎と真田に荷物番を任せて、若い者たちはしばしプールで楽しんだ。周や鐘崎はもちろんのこと、李や劉、鄧もいわゆるイイ男といえる。紫月もまた然りだ。冰だけが若干幼く見えるものの、男だけで固まってボール遊びなどをしているとさすがに目立つのか、今度は日本人と思われる女性のグループが声を掛けてきた。まったくもって忙しいことだ。
「あのぅ、もしかして日本の方ですか?」
「ご一緒してもいいですかー?」
「よかったらこの後お食事とかいかがですか?」
先程の欧米人の女性たちと殆ど同じ誘い文句が錯列だ。
と、いち早くそれに答えたのは鐘崎だった。
[ごめん、何かな?]
にこやかながらも言語は広東語だ。女たちは戸惑って互いの顔を見合わせている。
「あー……っと、エクスキューズミー。英語はいけますか?」
今度は片言英語で話し掛けてきた。すると続いて周が早口の広東語で畳み掛けた。
[すまんがよく分からんのでな。他を当たってくれると助かるぞ]
こちらもまた気持ちの悪いくらいに満面笑みのオマケ付きだ。女たちはタジタジとしてしまい、
「あー、ごめんなさい。日本人かと思ったから」
「また今度……」
苦笑と共にそそくさと去っていった。
「すまなかった。怖い思いをさせちまったな」
「う、ううん……。俺、その……ああいうの初めてで……ちょっとびっくりした」
周は冰の頭ごと引き寄せると、すっぽりと懐へと抱き包んだ。
「あの……俺、さっきの白龍の真似してハニー……じゃなかった。ダーリンがいるからって言ったんだけど、通じなくてさ」
やっぱり場慣れしてないからダメダメだねと眉を八の字に寄せた笑顔を見せる冰に、思ったよりもショックを受けていないのだろうことが窺えてホッと胸を撫で下ろす。
「真田さんと紫月さんもありがとうございます。俺ももっと精進しなきゃ」
「いえいえ、ご無事で何よりです。しかしこの真田も捨てたものではございませんな。まさか冰さんのダーリンと間違えられるとは」
その言葉にいち早く反応したのは周だ。
「――ダーリンと間違えられただと?」
なんとも言いようのない表情で眉根を寄せてみせる。
「そうなんですよ、坊っちゃま! 聞いてくださいまし! あの方たちは私を冰さんのいい人だと思われたようでございますよ。焦りましたが、今になって考えると褒め言葉と受け取っておくのも悪くないかと」
少々自慢げに胸を張った真田に、ドッと笑いが巻き起こる。結果として何事もなかったことだし、周もやれやれと苦笑させられるのだった。
「まあ、側を離れた俺が悪い。なんといっても喫煙スペースが限られているからな。ここで吸えりゃ万々歳なんだがな」
せっかくクリスマスのプレゼントで貰ったシガーケースを持参して来たというのに、公の場で自慢できないのが残念だと肩を落とす。
「真田も一之宮もすまなかったな。お前たちが居てくれたお陰で助かった」
周は詫びも兼ねて明日か明後日にでも買い物三昧と洒落込むかと言ってニヒルに笑った。
その後、源次郎と真田に荷物番を任せて、若い者たちはしばしプールで楽しんだ。周や鐘崎はもちろんのこと、李や劉、鄧もいわゆるイイ男といえる。紫月もまた然りだ。冰だけが若干幼く見えるものの、男だけで固まってボール遊びなどをしているとさすがに目立つのか、今度は日本人と思われる女性のグループが声を掛けてきた。まったくもって忙しいことだ。
「あのぅ、もしかして日本の方ですか?」
「ご一緒してもいいですかー?」
「よかったらこの後お食事とかいかがですか?」
先程の欧米人の女性たちと殆ど同じ誘い文句が錯列だ。
と、いち早くそれに答えたのは鐘崎だった。
[ごめん、何かな?]
にこやかながらも言語は広東語だ。女たちは戸惑って互いの顔を見合わせている。
「あー……っと、エクスキューズミー。英語はいけますか?」
今度は片言英語で話し掛けてきた。すると続いて周が早口の広東語で畳み掛けた。
[すまんがよく分からんのでな。他を当たってくれると助かるぞ]
こちらもまた気持ちの悪いくらいに満面笑みのオマケ付きだ。女たちはタジタジとしてしまい、
「あー、ごめんなさい。日本人かと思ったから」
「また今度……」
苦笑と共にそそくさと去っていった。
21
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる