極道恋事情

一園木蓮

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ダブルトロア

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「ところで俺たちのスマートフォンや身に付けていた貴金属などが取り上げられたようだが、お前さんは隠し場所を知らないか?」
 風たちへの連絡手段さえゲットできればなんとかなりそうだ。
「それなんですが……皆さんから貴金属を取り上げた後、通信を遮断するアタッシュケースに入れて嬢さんが持って行きました。俺の聞いた話では、ここで雇ったヨーロッパ人たちへの報酬にすると言ってました」
「は、抜かりがねえことで」
 だが、優秦が持って行ってしまったということは、通信手段が無いことに変わりはない。
「もうすぐ夜が明けるな。とにかく外へ出よう。どこかで大きな通りへ出られれば車を拾えるかも知れん」
 一刻も早くそうすべきだが、男には美紅の体調が気に掛かっていた。
「今は冬の最中です。明け方は特に冷える……。無理をして長距離を歩けば姐様のお身体が心配です」
 今の時点で美紅の懐妊を知っているのはこの男だけだ。亭主である風にさえ伝えていないのだから、曹たちにとっては首を傾げさせられても当然だろう。確かに女性である美紅には少々酷な道のりかも知れないが、彼女は拳法も嗜んでいるし、普通の女性よりは体力もあるはず、と皆そう思っているのだ。
 ――と、ここで勘のいい曹が驚いたように瞳を見開いた。
「奥方……もしかして……。風老板はこのことをご存知で……?」
 美紅は頬を朱に染めながら恥ずかしそうにうつむいては、
「いいえ、それはまだ……」
 ヤワヤワと首を横に振ってみせる。
「このことって……?」
 何も分からない紫月と冰は互いを見つめながら『なになに?』といった表情でいる。一方、医師である鄧には察しがついたようだ。
「もしかしておめでたでしょうか?」
「え!?」
「マジッ!?」
 冰と紫月が同時にすっとんきょうな声を上げた。
「ええ、あの……実はそうなの。私もウィーンに着いてから確信したばかりで……。あの人にもまだ言っていなくて」
 おおかた風の仕事が片付いてから報告するつもりでいたのだろう。この姐様の性質からすれば、自分のことよりも亭主の仕事を優先に気遣っても不思議はない。
 側で皆の様子を見ていた男も申し訳なさそうにしょぼくれた。
「すまねえ姐様……。本当ならご主人に一番に報告してしたかったでしょうに」
 自分が殺すだの犯すだのと脅したことで、それを言わざるを得なくしてしまったと、えらく恐縮している。曹らにとってもそれは同じ気持ちといったところだ。
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