極道恋事情

一園木蓮

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ダブルトロア

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 それから数日後――。
 周と鐘崎ら一行は日本へ直帰せずに、兄の周風らと共に香港へと立ち寄ることとなった。楚光順もまた、一人娘の優秦と共に周ファミリーの下にて沙汰を受ける為、共に香港へと連れて来られていた。
 ファミリーが拠点としている高楼の部屋には長である周隼を中央に、二人の息子・風と焔が両脇を固め、その周囲には側近たちがずらりと整列している。まるでいにしえの宮廷裁判の如く物々しい雰囲気の中で、誰もが険しい表情で楚親娘を取り囲んでいた。
「――楚光順」
 周隼の静かなる一声に光順は平身低頭で床に頭を擦り付けたまま身を震わせた。
「既に事の次第は聞き及んでいる。謝罪は無用だ。其方の意を聞きたい」
 さすがの優秦もこの雰囲気の中にあっては横柄な態度ではいられないわけか、父の側で一応はおとなしく頭を垂れていた。
「頭領・周、我が娘の愚行は父である私の管理不行届に他なりませぬ。どのような制裁も受け入れる所存でございます」
 震える声でそれだけ告げるのがやっとというように光順は地べたに両手と額を擦り付けた。
「よろしい。では沙汰を申し付ける」
 隼の言葉に静寂が過ぎる。
「これから申すは私の考えだが、異論があれば聞く耳は持つつもりだ」
 隼はそう前置きした上で自身の意見を述べ始めた。
「其方の娘が二度にも渡って引き起こした我が息子夫婦への企てだが、根本にある理由は恋情が叶わなかったことへの逆恨みと心得ている」
 そうだな? と、娘の優秦を一瞥しながら隼は続けた。
「前回の時は其方の顔を立てて外国へ移住することで赦したが、それにもかかわらず二度も同じ企てを起こしたとあれば見過ごすわけにはいかん。幸いにして息子たちの伴侶や曹来、鄧浩らの機転で最悪の事態は免れたが、我が息子の妻である美紅を亡き者にしようなどとは言語道断だ。三度目があれば我がファミリーはいい笑い者だ」
「……は! も、申し訳ございません……」
 沙汰を聞く前から光順は縮み上がっている。相反して当の娘はといえば、軽く唇を噛み締めながら、今にも舌打ちたいといった表情でいる。まったくもって正反対の親娘だ。
「警察に引渡し、司法で裁くという手もあるが、そうしたところで娘御の心根が変わるとは思えん。よって、優秦には我が伝手のあるヨーロッパの修道院に入ってもらい、そこで生涯を過ごしてもらうこととする。それが私の制裁だ」
 隼の言葉に親娘は驚いた。
「修道院……でございますか?」
 父の光順は瞳を大きく見開いたまま、瞬きさえままならないといった表情で硬直している。が、娘の方は冗談じゃないといったように眉を吊り上げた。
「修道院ですって……!? どうしてアタシが!? だいたい……今回のことだってアタシがやったっていう証拠があるんですか? アタシは何も知りません!」
 トップである周隼を前にしてとりあえずのところ敬語は使っているものの、態度はふてくされ気味で反省の色も感じられない。それどころか、まるで濡れ衣だと言わんばかりである。
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