極道恋事情

一園木蓮

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紅椿白椿

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「見ろ、藤が見事だ」
「ああ。今が満開だな。おめえがこの藤棚を造ってくれって親父に言ったんは……確か中坊の頃だったっけ?」
「正確には小学六年だったな」
「ってことはまだ中坊になる前か」
「おめえの名前と同じ色ってのに惹かれてな。どうしてもこの庭に欲しいっつって親父にしつこく頼んだっけ」
 懐かしいなとばかりに笑う。まるで満たされたと言わんばかりの表情が色香を讃えて匂い立つようだ。
「はは! まだタテガミも生える前かよ」
 そんなに昔から俺のことが好きだったわけ? とでもいうように少々意地悪な笑みを向ける。
 ――が、めげるどころか後ろ側の男はえらく素直に認めてみせた。
「もっと前からだったぞ。俺ァ、多分物心ついた頃からおめえしか見えてなかったように思う」
「マジ?」
「ああ、大マジだ。一途だろ?」
「バッカ……」
 甘い会話と染まる頬、その頬を擦り付け合いながら男たちは時折触れるだけの唇を重ね合う。
「今宵は犬たちが犬舎だからな」
「ああ、そういや昼間に予防接種に連れてったとかって若い衆が言ってたな」
「だから今日しかねえと思ったわけさ。普段はヤツらが庭に放されているからな」
 ここの庭では普段数匹のシェパードを放し飼いにしている。今日は予防接種の日だった為に犬たちは犬舎で静養させられていて静かな夜だ。ちょうど藤の花も満開を迎えたことだし、いい機会だと思い、自室を出て中庭に面したこの部屋で寛ごうと思い立った。そう、二人はここ鐘崎組若頭の鐘崎遼二と伴侶の紫月だったのだ。
 この部屋は普段は使っていない客人用なのだが、今が盛りの藤棚を望むには最高の位置どりなのだ。しかも今宵は放し飼いの犬たちもいないから、障子を開けながら睦の時を持ったとしても邪魔されることはない。犬たちがいれば飼い主の二人の元へ寄って来て、何かと自由にならないからである。
 だから今夜しかない。たまには花々を愛でながら情緒あるひと時を楽しみたいと思った鐘崎が紫月を誘った――と、まあこういうわけだった。
 まさか庭師見習いの男に覗かれているなどとは夢にも思わず、二人は情緒ある春の宵を楽しんでいた。寝乱れた寝具は睦を交わした情事の跡だ。
 と、そこへ幹部の清水が険しい表情で駆けつけて来て、鐘崎と紫月の二人は驚かされることとなった。
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