943 / 1,212
春遠からじ
20
しおりを挟む
それによると、子涵の父親の社で開発した空中ディスプレイに関するシステムが狙われていて、そのシステムを引き渡さない限り命はないと脅迫されているとのことだった。ここまでは源次郎の想像通りである。ただひとつ違ったのは、システムを狙っている相手が同業者などではなく、もっと危ない連中のようだというのだ。
「危ない連中というとどのような――です?」
鐘崎が訊くも、肝心の正体までは掴みきれていないという。
「我々も当初は敵が同業者だと踏んで調べを進めていたのですが、どうも違うようです。CEOのお話ではその同業者の中にも脅迫めいた行為に遭っている方々がいらっしゃるようで、それ以前に空中ディスプレイに関しては皆で協力し合って開発を進めようということだったらしく、同業者が犯人だとは考えられないと――。脅しのやり方から考えてもおそらくは裏の世界の者だろうと思われるのだが――」
「と言うと、どのような脅しなのです?」
元々子涵の父親から警護の依頼を受けたのは台湾のエージェントチームだったそうなのだが、彼らは別の任務に携わっていて手が離せない為にメビィらのチームに護衛の任務が回ってきたらしい。狙われているシステムが世界的に公表され、特許が下りるまでの間の警護ということだったそうだが、台湾にいる間に幾度か武力行使を受けたとのことだった。
「ヤツらはスナイパーを抱えていましてな。これまでに三度ほどCEOの命を狙ってきましたが、そのどれもが威嚇の射撃でした。わざと外して撃ってきたのは明らかで、相当に腕のいいスナイパーだと思われます。またその間、彼の社にも侵入され、コンピュータ室のデータを破壊されるという実害も受けています。ただし肝心のシステムは別に保管されていた為に無事でした」
システムの発表日が明後日に迫っている為、何としてでもあと三日を凌ごうと、台湾を出てこの香港へ避難して来たのだそうだ。
「――なるほど。それであと三日が勝負ということですか」
メビィが三日でカタがつくと言っていたのはそういう意味だったわけだ。
「システムが発表されてしまえば敵も手出しはできなくなります。おそらくは既に敵もこの香港へやって来ていると見て間違いないでしょうが、ここにCEOがいるということを突き止められんようにせねばと思っています」
彼には万が一に備えてGPSを所持してもらい、ホテルの部屋からは一歩も出ずに身を隠してもらっているという。
「しかしながらお子さんにとって、ここに缶詰というのも少々酷なことでしたからな。あなた方に預かってもらえたことは有り難く思っております」
「少年のことはとりあえず心配はいりません。我々が責任を持って保護します。今、うちの者が敵組織についても調べを進めておりますので、何か分かり次第お知らせします」
鐘崎は一通り事情を聞いたところで、少年の父親に面会を申し出た。
「子涵君からもお父さんに渡して欲しいと手紙を預かってきておりますので――」
これですと言って、先程子涵に書かせたメモを見せた。内容は取り立ててどうということもない親子の会話で、パパ風邪引かないようになどということが書かれてあった。
チームもまさか鐘崎が敵と通じているなどとは思っていないが、念の為疑わしき種を作らないようにと鐘崎が自らチームの皆に公開したのだ。
「そうですか。子涵君もお父さんを心配しているのでしょうな。どうぞ、ご案内しましょう」
ボスの許可を経て、鐘崎は子涵の父親との面会に漕ぎ着けたのだった。
「危ない連中というとどのような――です?」
鐘崎が訊くも、肝心の正体までは掴みきれていないという。
「我々も当初は敵が同業者だと踏んで調べを進めていたのですが、どうも違うようです。CEOのお話ではその同業者の中にも脅迫めいた行為に遭っている方々がいらっしゃるようで、それ以前に空中ディスプレイに関しては皆で協力し合って開発を進めようということだったらしく、同業者が犯人だとは考えられないと――。脅しのやり方から考えてもおそらくは裏の世界の者だろうと思われるのだが――」
「と言うと、どのような脅しなのです?」
元々子涵の父親から警護の依頼を受けたのは台湾のエージェントチームだったそうなのだが、彼らは別の任務に携わっていて手が離せない為にメビィらのチームに護衛の任務が回ってきたらしい。狙われているシステムが世界的に公表され、特許が下りるまでの間の警護ということだったそうだが、台湾にいる間に幾度か武力行使を受けたとのことだった。
「ヤツらはスナイパーを抱えていましてな。これまでに三度ほどCEOの命を狙ってきましたが、そのどれもが威嚇の射撃でした。わざと外して撃ってきたのは明らかで、相当に腕のいいスナイパーだと思われます。またその間、彼の社にも侵入され、コンピュータ室のデータを破壊されるという実害も受けています。ただし肝心のシステムは別に保管されていた為に無事でした」
システムの発表日が明後日に迫っている為、何としてでもあと三日を凌ごうと、台湾を出てこの香港へ避難して来たのだそうだ。
「――なるほど。それであと三日が勝負ということですか」
メビィが三日でカタがつくと言っていたのはそういう意味だったわけだ。
「システムが発表されてしまえば敵も手出しはできなくなります。おそらくは既に敵もこの香港へやって来ていると見て間違いないでしょうが、ここにCEOがいるということを突き止められんようにせねばと思っています」
彼には万が一に備えてGPSを所持してもらい、ホテルの部屋からは一歩も出ずに身を隠してもらっているという。
「しかしながらお子さんにとって、ここに缶詰というのも少々酷なことでしたからな。あなた方に預かってもらえたことは有り難く思っております」
「少年のことはとりあえず心配はいりません。我々が責任を持って保護します。今、うちの者が敵組織についても調べを進めておりますので、何か分かり次第お知らせします」
鐘崎は一通り事情を聞いたところで、少年の父親に面会を申し出た。
「子涵君からもお父さんに渡して欲しいと手紙を預かってきておりますので――」
これですと言って、先程子涵に書かせたメモを見せた。内容は取り立ててどうということもない親子の会話で、パパ風邪引かないようになどということが書かれてあった。
チームもまさか鐘崎が敵と通じているなどとは思っていないが、念の為疑わしき種を作らないようにと鐘崎が自らチームの皆に公開したのだ。
「そうですか。子涵君もお父さんを心配しているのでしょうな。どうぞ、ご案内しましょう」
ボスの許可を経て、鐘崎は子涵の父親との面会に漕ぎ着けたのだった。
29
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる