極道恋事情

一園木蓮

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春遠からじ

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 それによると、子涵の父親の社で開発した空中ディスプレイに関するシステムが狙われていて、そのシステムを引き渡さない限り命はないと脅迫されているとのことだった。ここまでは源次郎の想像通りである。ただひとつ違ったのは、システムを狙っている相手が同業者などではなく、もっと危ない連中のようだというのだ。
「危ない連中というとどのような――です?」
 鐘崎が訊くも、肝心の正体までは掴みきれていないという。
「我々も当初は敵が同業者だと踏んで調べを進めていたのですが、どうも違うようです。CEOのお話ではその同業者の中にも脅迫めいた行為に遭っている方々がいらっしゃるようで、それ以前に空中ディスプレイに関しては皆で協力し合って開発を進めようということだったらしく、同業者が犯人だとは考えられないと――。脅しのやり方から考えてもおそらくは裏の世界の者だろうと思われるのだが――」
「と言うと、どのような脅しなのです?」
 元々子涵の父親から警護の依頼を受けたのは台湾のエージェントチームだったそうなのだが、彼らは別の任務に携わっていて手が離せない為にメビィらのチームに護衛の任務が回ってきたらしい。狙われているシステムが世界的に公表され、特許が下りるまでの間の警護ということだったそうだが、台湾にいる間に幾度か武力行使を受けたとのことだった。
「ヤツらはスナイパーを抱えていましてな。これまでに三度ほどCEOの命を狙ってきましたが、そのどれもが威嚇の射撃でした。わざと外して撃ってきたのは明らかで、相当に腕のいいスナイパーだと思われます。またその間、彼の社にも侵入され、コンピュータ室のデータを破壊されるという実害も受けています。ただし肝心のシステムは別に保管されていた為に無事でした」
 システムの発表日が明後日に迫っている為、何としてでもあと三日を凌ごうと、台湾を出てこの香港へ避難して来たのだそうだ。
「――なるほど。それであと三日が勝負ということですか」
 メビィが三日でカタがつくと言っていたのはそういう意味だったわけだ。
「システムが発表されてしまえば敵も手出しはできなくなります。おそらくは既に敵もこの香港へやって来ていると見て間違いないでしょうが、ここにCEOがいるということを突き止められんようにせねばと思っています」
 彼には万が一に備えてGPSを所持してもらい、ホテルの部屋からは一歩も出ずに身を隠してもらっているという。
「しかしながらお子さんにとって、ここに缶詰というのも少々酷なことでしたからな。あなた方に預かってもらえたことは有り難く思っております」
「少年のことはとりあえず心配はいりません。我々が責任を持って保護します。今、うちの者が敵組織についても調べを進めておりますので、何か分かり次第お知らせします」
 鐘崎は一通り事情を聞いたところで、少年の父親に面会を申し出た。
「子涵君からもお父さんに渡して欲しいと手紙を預かってきておりますので――」
 これですと言って、先程子涵に書かせたメモを見せた。内容は取り立ててどうということもない親子の会話で、パパ風邪引かないようになどということが書かれてあった。
 チームもまさか鐘崎が敵と通じているなどとは思っていないが、念の為疑わしき種を作らないようにと鐘崎が自らチームの皆に公開したのだ。
「そうですか。子涵君もお父さんを心配しているのでしょうな。どうぞ、ご案内しましょう」
 ボスの許可を経て、鐘崎は子涵の父親との面会に漕ぎ着けたのだった。
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