極道恋事情

一園木蓮

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春遠からじ

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 なんと上海に渡った子涵の母親が既に他界しているらしいことが分かったからである。
 源次郎が引き続き調査を進めたところ、その悲痛な事実が明らかとなったのだった。
「その死因についてですが――どうも黒い疑惑が拭えませんな。現段階では憶測でしかありませんが、彼女の不倫相手というその男が始末したのではないかと思われるような事案がチラホラ見当たります」
「――というと?」
「子涵少年の母親は病死ということになっておりましたが、通院履歴などからして死亡するような病歴が見当たらないのです。上海に渡って二年程は男と一緒に暮らしていたようですが、その間彼女が罹った町医者の話では特に悪いところなどなかったというのです」
 もちろんその時点では病気が見つからなかっただけかも知れないがと前置きした上で、源次郎からは更に疑惑が濃くなるような報告が告げられた。
「実は彼女が亡くなる半年程前から男の方に新たな女の影が浮上しているんです。相手は上海の裏カジノで知り合った両替役の女だとか――。かなりのいい女のようですが、闇カジノで両替などしているというところからして、裏に男がついているのは確実でしょうな。おそらくはそのカジノを仕切っている元締めあたりではないかと」
「つまりは何だ――その女に入れ上げて、子涵の母親が邪魔になったということか?」
「単に邪魔になっただけなら別れればいいだけの話でしょうが、子涵少年の母親が『うん』と言わなかったのかも知れません」
「――で、こじれた挙句に面倒になって葬ったと?」
「もしくは――新しい女についているのが裏カジノの元締めあたりなら、案外脅されて殺らざるを得なかったのかも知れませんが……」
「――ッ、何だかえらく話が逸れてきたな」
 鐘崎と源次郎が頭を丸めていると、周がやって来て更なる難題にぶち当たったことが告げられた。なんと子涵の母親の不倫相手だった男は空中ディスプレイのシステムを横取りして我が物にしようと企んでいるらしいというのだ。
「李と共に兄貴の側近の曹さんも調査に加わってくれてな。どうもその男は王子涵の親父の社を乗っ取るつもりでいるらしい」
「社を乗っ取るだと――?」
「ヤツが雇った裏の世界の者がコンピューター室を破壊したといっていたろうが。そこで破壊された物を調べてみたんだが、大して重要とは思えない――というよりもその気になれば容易に復元が可能な物ばかりだったそうだ。だが肝心のシステムは無事だった。つまり破壊工作は単なる脅しの一環で、真の目的は画期的システムごと社もろとも乗っ取ろうってなわけだ」
 李らの調べによると、不倫相手の男というのも在籍時は有能なプログラマーだったそうだ。社を追われたと同時に安定した生活も失った彼は、その才能を活かせる新たな土壌を探したようだが思うようにならず、いっそのこと子涵少年の父親の社を乗っ取って、業界トップとして返り咲くつもりでいるらしい。
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