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春遠からじ
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その結果、鐘崎らが睨んだ通り子涵の母親の不倫相手が絡んでいることが濃厚になってきた。周が当たってくれた台湾マフィアからの情報によると、かなり利の良い仕事を請け負ったと息巻いている組織が見つかったとのことだ。元々は繁華街を根城にしているチンピラグループの面々が持ってきた話のようだが、ターゲットが子涵の父親の会社だと分かると、すぐにその下っ端グループを取り仕切っている組織が腰を上げたらしい。
子涵の父親の社は台湾では有名どころである。表向きはシステムの発表を阻害するとの脅迫と共に、大金をせしめるつもりでいるらしかった。
「やはりチンピラグループに話を持ち掛けたのは不倫相手の男のようだ。実際誰にどういった条件で依頼したのかというところの確証は取れてねえが、李が引き続き調べを進めているから、そう時を待たずにはっきりするだろう」
周の報告に続いて、鐘崎と源次郎の方でも成果があったようだ。
「その不倫相手の男だが、どうやらマトモな職には就けていないようだな。離縁の直後に坊主の母親と共に上海に渡ったことが掴めた。酒場や裏カジノを転々としながら日銭を稼いで何とか生活しているようで、到底裕福とは程遠い暮らしっぷりだ。ただ母親の方が現在どうなっているのかが掴めてねえ。今も男と一緒にいるのか、あるいは別れたのか――こっちももう少し時間が掛かりそうだ」
とはいえ、一両日中には掴めるだろうとのことだった。
「じゃあ子涵君のお母さんとお父さんは離婚以来まったく連絡を取っていないっていうことなのかな……」
冰が気の毒そうな顔つきでいる。
「まあ最初の一度や二度はどうか知れんが、離縁から数年経っているそうだからな。子涵は父親の手元にいるわけだし、養育費などは必要なかろう。連絡が途絶えたとしても仕方ないといったところか」
「でもお母さんも子涵君には会いたいんじゃないのかな……。息子に会わせてくれって言ってきても不思議じゃないよね?」
ただ、幼い息子を置いて男と出て行ったような女だ。果たして子供に会いたがるかどうかは定かでない。
「もう少し年月が経ちゃあそういう気になる時もくるかも知れんがな。当面は不倫相手の手前、ガキに会いたいとは言い出しづらかろう」
それではあまりにも子涵が気の毒だと、紫月も冰も肩を落としている。仮に母親が既に男と切れていたなら、女一人で生活も苦労続きかも知れない。自業自得といえばそうだが、子供の身になればやはり心配なところだ。
「いずれにせよ女の元亭主を脅迫して銭をせしめようなんざロクな野郎じゃねえのは確かだ。仮に今も二人で暮らしていたとして、女の方もそんな計画に乗っかっているようじゃどうにもならんな」
いかに子涵が恋しがっているにしろ、そんな薄情な女よりは秘書だという女性の方がよほど良いのではと思ってしまう。
皆、気重ながら調査の続きに精を出したものの、次の朝を迎える頃になると、またしてもとんでもない事実に行き当たってしまったのだった。
子涵の父親の社は台湾では有名どころである。表向きはシステムの発表を阻害するとの脅迫と共に、大金をせしめるつもりでいるらしかった。
「やはりチンピラグループに話を持ち掛けたのは不倫相手の男のようだ。実際誰にどういった条件で依頼したのかというところの確証は取れてねえが、李が引き続き調べを進めているから、そう時を待たずにはっきりするだろう」
周の報告に続いて、鐘崎と源次郎の方でも成果があったようだ。
「その不倫相手の男だが、どうやらマトモな職には就けていないようだな。離縁の直後に坊主の母親と共に上海に渡ったことが掴めた。酒場や裏カジノを転々としながら日銭を稼いで何とか生活しているようで、到底裕福とは程遠い暮らしっぷりだ。ただ母親の方が現在どうなっているのかが掴めてねえ。今も男と一緒にいるのか、あるいは別れたのか――こっちももう少し時間が掛かりそうだ」
とはいえ、一両日中には掴めるだろうとのことだった。
「じゃあ子涵君のお母さんとお父さんは離婚以来まったく連絡を取っていないっていうことなのかな……」
冰が気の毒そうな顔つきでいる。
「まあ最初の一度や二度はどうか知れんが、離縁から数年経っているそうだからな。子涵は父親の手元にいるわけだし、養育費などは必要なかろう。連絡が途絶えたとしても仕方ないといったところか」
「でもお母さんも子涵君には会いたいんじゃないのかな……。息子に会わせてくれって言ってきても不思議じゃないよね?」
ただ、幼い息子を置いて男と出て行ったような女だ。果たして子供に会いたがるかどうかは定かでない。
「もう少し年月が経ちゃあそういう気になる時もくるかも知れんがな。当面は不倫相手の手前、ガキに会いたいとは言い出しづらかろう」
それではあまりにも子涵が気の毒だと、紫月も冰も肩を落としている。仮に母親が既に男と切れていたなら、女一人で生活も苦労続きかも知れない。自業自得といえばそうだが、子供の身になればやはり心配なところだ。
「いずれにせよ女の元亭主を脅迫して銭をせしめようなんざロクな野郎じゃねえのは確かだ。仮に今も二人で暮らしていたとして、女の方もそんな計画に乗っかっているようじゃどうにもならんな」
いかに子涵が恋しがっているにしろ、そんな薄情な女よりは秘書だという女性の方がよほど良いのではと思ってしまう。
皆、気重ながら調査の続きに精を出したものの、次の朝を迎える頃になると、またしてもとんでもない事実に行き当たってしまったのだった。
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