極道恋事情

一園木蓮

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春遠からじ

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「その警護の点だが――万が一の為と思ってあの坊主の書いた父親への手紙にGPSを仕込んでおいた。メビィらには言っていないが、何かの時に役立つかも知れんと思ってな」
 鐘崎がそう告げる。
「どうも今回のことは空中ディスプレイに関するシステム自体が目的じゃないんじゃねえかとも思い始めているんだ」
 どういうことだと皆で鐘崎を見やる。
「子涵の父親の話ではシステムを狙っているのは同業者ではないだろうということだそうだ。チームの見方だと裏の世界の者の仕業じゃねえかということだが、だとすれば目的はもっと別のところにあるように思えてならねえ」
「確かにな――。空中ディスプレイが普及して困るという根拠が分からねえ」
 周もまた鐘崎の意見に同調する素振りを見せる。同業者同士で我先にと争うならまだしも、裏の世界の者が開発を阻止する理由が分からないのは確かだ。
「メビィらの話によると、社にも侵入されてコンピュータ室を破壊されたということだが、肝心のシステム自体は無事だったそうだ。腕のいいスナイパーを抱えているような組織がそんなヘマをすると思うか? 本当にそのシステムとやらを欲しがってるなら、しくじるようなことはしないだろう」
「まあそうだろうな。とすれば、案外真の目的は別にあって、空中ディスプレイがどうのってのは目眩しということになろうが――」
「いずれにせよシステムの発表の日までに何かをやらかそうとしているのは間違いないだろう。本筋はメビィらのチームに任せるとして、俺たちは別の面から敵の目的を探ろうかと思うんだが」
「別の面って……どんな?」
 紫月が訊く。
「実は――これは単なる俺の勘なんだが。もしかすると坊主の父親と離縁した嫁か、あるいはその不倫相手の男あたりが絡んでいる可能性もあるんじゃねえかと」
「というと、離縁の際に退社したという元社員の若い男ってことか?」
 今度は周が相槌を入れた。
「ああ……。その男にしてみれば不倫が元で職を失ったことになるわけだ。今現在、ヤツがどんな暮らしをしているかにもよるが、仮にあまり裕福とはいえなかった場合だ。子涵の親父だけが幸せになるのを憎々しく思っていないとも限らない」
「なるほど、一理あるな。システムが発表されれば、あの坊主の親父の立場は更に上がろう。加えて私生活の面では秘書とよろしくやってるなんてのが知れれば、そいつにとっては面白くねえ話かも知れんな」
「とりあえずその男と坊主の母親が今現在どこでどうしているのかを調べてみようと思う」
「スナイパーが狙ってきているということだが、もしかしたらその男が雇ったということも考えられる。俺の方はそっちの線で当たってみよう」
 鐘崎は源次郎と共に早速調べに掛かることにして、その間、周は懇意にしている台湾のマフィアに当たって、ここ最近で少々派手な動きを見せているような連中がいないかを洗ってくれるという。仮に子涵の母親の不倫相手が黒星だとして、彼が雇うとしたらどんな者かという線でも調べを進めることになった。
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