極道恋事情

一園木蓮

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倒産の罠

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「――クソッ! 何処へ消えちまいやがった……」
「携帯は? もちろんかけてみたんだろうな?」
「ああ、だが繋がらん。今、源次郎さんがGPSを追ってくれているんだが……いつも着けている肝心の腕時計はアパートに置いたままだから、期待はできんだろうな」
 冰の腕時計には万が一の緊急事態に際してGPSが仕込まれているのは皆承知だが、図書館に勤務するには高級で目立ち過ぎるということで、ここに引っ越して来てからは着けていなかったそうなのだ。
「ということは――頼みはスマートフォンのGPSのみというわけか……」
 仮に何者かによる拉致だとして、スマートフォンは当然取り上げられていると思って間違いない。
 その後すぐに鐘崎組と汐留に冰捜索の拠点が設置された。
「図書館の帰りに拉致されたと仮定して、今考えられる犯人は中橋らの可能性が高い。仮に裏の世界の関係者だとすれば、汐留周辺での拉致を考えるはずだ」
 周の経営するアイス・カンパニーが乗っ取られたという情報は裏の世界の関係者にも公にしていない。冰はこれまでにも幾度か拉致に遭ってはいるが、相手はマカオの張敏だったり周の後輩の唐静雨という、いわば周の関係者だった。今回もまた周の関係で狙われたとすれば、汐留近辺で拉致されるだろうし、現在周と共にこの川崎に住んでいることを知らないはずだ。
 とすれば、やはり中橋や丸中といった企業乗っ取り犯の可能性が一番高いだろう。
「クソッ! こんなことなら冰君の警護を続けるべきだった!」
 紫月が悔しげに唇を噛み締める。中橋の手下たちが偵察に来た際の話で、もうここへの見回りは必要ないとはっきり言っていたし、彼らが汐留の曹を訪ねて接触が叶ったことで、鐘崎からもこれまでのような鉄壁の警護は解除していいと言われていたのだ。もちろん日に一度は必ず図書館にも見回りに行っていたし、アパートへも訪ねたりしていたのだが、四六時中張り付いた警護は行なっていなかったことが悔やまれてならない。
 外回りで出ている組員たちに連絡を取り、一番近くにいそうな者をすぐに中橋らのヤサである青山のマンションに向かわせたが、留守のようで人の気配は見当たらないとのことだった。汐留の曹らの方へも何ら連絡は入っていないという。
 至急図書館付近の防犯カメラを当たると共に、警視庁の丹羽と連携して、警察のNシステムなどで行方を追ってもらおうと思っていた矢先だった。その丹羽から連絡が入り、驚くような事実が判明することとなった。
 何と、中橋、丸中らと思われる連中から警察宛てに冰を拉致したという犯行声明が舞い込んできたというのだ。しかも、連れ去られたのは冰だけではなく、これまで中橋らが乗っ取ってきた中小企業経営者の息子や娘など複数人だという。彼らが監禁されている現場がリアルタイムの動画で送られてきて、自分たちが昨今の企業乗っ取りを行なった犯人だということを堂々暴露してよこしたのだそうだ。
 動画には確かに冰も映っていて、他の者らと共に後ろ手に縛られて地下室のような空間に捕らわれている様子が見てとれるとのことだった。
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