極道恋事情

一園木蓮

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倒産の罠

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 とにかくは冰が無事でいることに安堵したものの、犯人たちの意図が分からずに丹羽ら警察も驚きを隠せないでいるようだ。
「――いったい何を考えてやがる……。てめえらが乗っ取り犯だと名乗った挙句、その乗っ取った企業の家族をまとめて拉致監禁するとは目的はいったい何だってんだ!」
 周が舌打ちながら拳を握り締める。
「――とにかく、拉致された時間から考えて、この監禁場所がそう遠くではないと思われる。動画に映っていた人数は冰を含めて十人そこらだ。今、丹羽の方でどこの企業の家族かの割り出しを急いでいるそうだ。俺たちも合流しよう!」
 鐘崎と周らは汐留の曹や李、劉、鄧らとも合流して警視庁へ向かうことにした。その間、鐘崎組に残った幹部の清水と橘らで図書館周辺の防犯カメラを当たってもらうことにする。丸中らの調査に出ていた父の僚一にも連絡して、ひとまず警視庁で落ち合うことに決めた。

 移動中の車内では源次郎以下数名の若い衆らで冰らが監禁されている場所の割り出しが急がれていた。
「コンクリートの壁、剥き出しの配管、窓は見当たりません。おそらく地下と見てよろしいかと――」
 源次郎が動画を元に3D画像で監禁場所の様子を組み立てていく。
「声の反響から部屋の広さはかなりのものと思われます。冰さんが定時で図書館を出たと仮定して、その近辺で拐われたとすれば――おそらくこの範囲内のどこかであるはずです」
 地図に円で囲った薄い色が載せられる。
「図書館周辺で冰を拉致し、この動画が警視庁に送られるまでに約三時間――か。源さんの言う通り、この円の範囲内で当たりだろうな」
「おそらくはどこかのビルの地下でしょうが、範囲的にはかなり広うございます。清水君たちが防犯カメラから何か情報を拾えれば、もう少し範囲が絞れるかと」
 仮にも拉致しようなどという者が防犯カメラに映り込むようなヘマをするとも思えないが、それらしい車などがどの方向へ向かったかなどが分かれば絞り込めてくるだろう。他にも拉致されている者が十名近くいるわけだから、丹羽ら警察の方でも当たっているだろう。それらの情報を合わせれば大まかな場所が絞り込めるはずである。
 周らが警視庁に着くと、少しして僚一が駆け付けて来た。彼は丸中らの交友関係から監禁場所の候補をいくつか見繕って持参してきたのだった。さすがは僚一だ、やることが一線を画している。
 その候補地は正に源次郎が当たりをつけた円の中に位置していた。
「動画に映っていた広さからすると――おそらくここか、ここ。もしくはここの三箇所だ」
 僚一が地図を指差しながら言う。至急、捜査員たちが現場へ散って行く傍ら、またしても犯人たちからの新たな動画が届けられた。
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