995 / 1,212
倒産の罠
32
しおりを挟む
一方、その頃捕らわれた冰らの方では犯人たちが逃走の準備に入っていたようだ。
二箇所ある鉄製の扉の一つに爆弾をセットして、次の動画を警視庁へ送る為の段取りが進められていた。
「いいか、てめえら。三十分後にもう一度警視庁宛てに動画を送る。さっきと同じように全員で『助けてくれ』と懇願するんだ。よほどの無能でなけりゃ、いずれは警察もここを突き止めるだろうからな」
「警察がやって来たらお前らは乗っ取られた会社を取り戻してくれと拝み倒せ。ヤツらが承諾すれば命は助けてやる」
犯人たちが交互交互にそんなことを口にする中、人質の一人が恐る恐る彼らに質問を投げ掛けた。
「あの……あなた方はいったいどういうおつもりなんです? わざわざ警察をここへ呼んで……そんなことをすればあなた方だって捕まってしまうんじゃないですか……?」
すると犯人たちは感心したように肩をすくめてみせた。
「ほーお? 随分と勇気のあるヤツがいたもんだ。自分たちの身より俺たちの心配をしてくれるってのか?」
人質は男性で、ここに捕らわれている者たちの中では一番の年長者のようだった。といっても周らと同い年くらいといったところか。彼は恐怖ながらも勇気を振り絞って先を続けた。
「だってそうでしょう? 僕たちの親の会社を乗っ取ったのはあなた方なのでしょう? 中には倒産に追い込まれたところもあるんだ。それを……取り戻してくれと警察に頼めとは……何をお考えなのかと思っても不思議ではないでしょう」
彼の言うことも尤もだ。犯人たちはせせら笑いながらもその理由を説明してよこした。
「ふん! アンタの言うことはご尤もさ! 親が経営していた会社を乗っ取られ、潰されて……アンタらの生活も地に落ちたはずだ。当然警察は犯人を捕まえるのが役目だが、仮に乗っ取り犯の俺たちが逮捕されたとして、被害者であるアンタらにとってはそれだけで満足できるか? できねえだろ? 会社を取り戻して元の生活をそっくり元に戻してもらいたい――そうは思わねえか?」
「……それは……もちろん思いますが」
「だったら警察にそう頼めと言ってるんだ。ヤツらはな、事件が起こりゃ一応捜査に乗り出すフリはするが、マトモに解決できた試しなんぞ無えのさ! 犯人は捕まえられない、例え捕まえても殺人やなんかの凶悪犯罪でない限り保釈金さえ積めばすぐにシャバへ出す! 特に銭に関することなんかにゃめちゃくちゃ甘い! 乗っ取られた会社は元には戻らない、結局泣きを見るのは被害者だ! 俺たちはな、そういう警察の怠慢を世間に分からせて……二度と被害者が泣きを見なくて済む世の中にしたいと思ってるだけだ! いわば世直しってヤツだ。その為なら俺たちが捕まろうと構わねえ。そういう覚悟の下でやっているんだ!」
驚くべき言い分に、監禁されている皆が互いを見合わせてしまった。
二箇所ある鉄製の扉の一つに爆弾をセットして、次の動画を警視庁へ送る為の段取りが進められていた。
「いいか、てめえら。三十分後にもう一度警視庁宛てに動画を送る。さっきと同じように全員で『助けてくれ』と懇願するんだ。よほどの無能でなけりゃ、いずれは警察もここを突き止めるだろうからな」
「警察がやって来たらお前らは乗っ取られた会社を取り戻してくれと拝み倒せ。ヤツらが承諾すれば命は助けてやる」
犯人たちが交互交互にそんなことを口にする中、人質の一人が恐る恐る彼らに質問を投げ掛けた。
「あの……あなた方はいったいどういうおつもりなんです? わざわざ警察をここへ呼んで……そんなことをすればあなた方だって捕まってしまうんじゃないですか……?」
すると犯人たちは感心したように肩をすくめてみせた。
「ほーお? 随分と勇気のあるヤツがいたもんだ。自分たちの身より俺たちの心配をしてくれるってのか?」
人質は男性で、ここに捕らわれている者たちの中では一番の年長者のようだった。といっても周らと同い年くらいといったところか。彼は恐怖ながらも勇気を振り絞って先を続けた。
「だってそうでしょう? 僕たちの親の会社を乗っ取ったのはあなた方なのでしょう? 中には倒産に追い込まれたところもあるんだ。それを……取り戻してくれと警察に頼めとは……何をお考えなのかと思っても不思議ではないでしょう」
彼の言うことも尤もだ。犯人たちはせせら笑いながらもその理由を説明してよこした。
「ふん! アンタの言うことはご尤もさ! 親が経営していた会社を乗っ取られ、潰されて……アンタらの生活も地に落ちたはずだ。当然警察は犯人を捕まえるのが役目だが、仮に乗っ取り犯の俺たちが逮捕されたとして、被害者であるアンタらにとってはそれだけで満足できるか? できねえだろ? 会社を取り戻して元の生活をそっくり元に戻してもらいたい――そうは思わねえか?」
「……それは……もちろん思いますが」
「だったら警察にそう頼めと言ってるんだ。ヤツらはな、事件が起こりゃ一応捜査に乗り出すフリはするが、マトモに解決できた試しなんぞ無えのさ! 犯人は捕まえられない、例え捕まえても殺人やなんかの凶悪犯罪でない限り保釈金さえ積めばすぐにシャバへ出す! 特に銭に関することなんかにゃめちゃくちゃ甘い! 乗っ取られた会社は元には戻らない、結局泣きを見るのは被害者だ! 俺たちはな、そういう警察の怠慢を世間に分からせて……二度と被害者が泣きを見なくて済む世の中にしたいと思ってるだけだ! いわば世直しってヤツだ。その為なら俺たちが捕まろうと構わねえ。そういう覚悟の下でやっているんだ!」
驚くべき言い分に、監禁されている皆が互いを見合わせてしまった。
18
あなたにおすすめの小説
禁断の祈祷室
土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。
アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。
それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。
救済のために神は神官を抱くのか。
それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。
神×神官の許された神秘的な夜の話。
※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる