996 / 1,212
倒産の罠
33
しおりを挟む
「で、ではあなた方は……その為に僕らの親が経営していた会社を乗っ取って……僕らを誘拐したとおっしゃるんですか……?」
「そういうことだ。有り難く思ってくれよー」
「……そんな……何故そんなことを……」
すると、これまでの成り行きを聞いていた別の人質が恐る恐る口を挟んだ。今度は女性だ。
「もしかして……あなたたちも……私たちと同じように誰かに会社を潰された被害者とか……?」
女性の言葉に犯人たちは揃って眉根を寄せては苦々しく表情を歪めてみせた。
「勘がいいな、お嬢さん。その通りよ――」
「俺たちの親もアンタらの家と同じように会社を経営していた。だが……面の皮の厚いクズ共に騙されて……社を乗っ取られたり潰されたり……。それを苦に俺の両親は首を括って死んじまったんだ……!」
吐き捨てるようにそう言ったのは中橋だった。
「だが警察は乗っ取り犯を捕まえることもせず……通りいっぺんの捜査で事情聴取に来ただけだった……。両親が死んだ時も……何だ、自殺かと苦笑い……まるで手間掛けさせやがってってな態度だった……! そん時の俺の気持ちが分かるかッ! はらわたが煮えくりかえるなんてもんじゃ到底言い表せねえ! 今だって俺は……あの日の……両親の死に顔を忘れたことはねえんだ!」
「こいつの言う通りだ。俺たちは皆、同じ境遇に辛酸を舐めてきた者の集まりだ。だからアンタらの会社を乗っ取ってアンタらを拉致した。人命がかかっていりゃあ警察も少しは本気で動かざるを得ねえだろうからな。もしも警察がアンタらを見捨てるようなら……この動画を世間に公表してヤツらの怠慢さを知らしめるつもりだ!」
まるで苦渋を呑み込むようにそう言った犯人たちに、誰も返す言葉を失くし、場は静まり返ってしまった。
確かに言い分は分かるし同情もするが、だからといってまったく関係のない自分たちの企業を乗っ取ったり潰したりすることが褒められるとは思えない。
先程の女性がまたも口を挟んだ。
「……ねえ、だったらどうしてアタシたちのようなまったく関係ない企業をターゲットにしたの? どうせなら……あなたたちの会社を潰したっていう張本人に復讐してやるべきじゃない……。それなのに何の関係もない、あなたたちには何もしていないアタシたちがこんな目に遭わされるなんて……それは違うと思う!」
悔しさ余ってかそう叫んだ彼女に、隣にいた別の男性が『よせ!』というように肘で突く。
「ふん! お嬢さん、アンタの言うことは尤もだ。だがな、もう後戻りはできねえんだ。アンタたちが失った生活は――今度こそ無能な警察に取り戻してもらうこった」
犯人たちはそう言うと、カメラを皆に向けて警察との交渉に取り掛かった。
「そういうことだ。有り難く思ってくれよー」
「……そんな……何故そんなことを……」
すると、これまでの成り行きを聞いていた別の人質が恐る恐る口を挟んだ。今度は女性だ。
「もしかして……あなたたちも……私たちと同じように誰かに会社を潰された被害者とか……?」
女性の言葉に犯人たちは揃って眉根を寄せては苦々しく表情を歪めてみせた。
「勘がいいな、お嬢さん。その通りよ――」
「俺たちの親もアンタらの家と同じように会社を経営していた。だが……面の皮の厚いクズ共に騙されて……社を乗っ取られたり潰されたり……。それを苦に俺の両親は首を括って死んじまったんだ……!」
吐き捨てるようにそう言ったのは中橋だった。
「だが警察は乗っ取り犯を捕まえることもせず……通りいっぺんの捜査で事情聴取に来ただけだった……。両親が死んだ時も……何だ、自殺かと苦笑い……まるで手間掛けさせやがってってな態度だった……! そん時の俺の気持ちが分かるかッ! はらわたが煮えくりかえるなんてもんじゃ到底言い表せねえ! 今だって俺は……あの日の……両親の死に顔を忘れたことはねえんだ!」
「こいつの言う通りだ。俺たちは皆、同じ境遇に辛酸を舐めてきた者の集まりだ。だからアンタらの会社を乗っ取ってアンタらを拉致した。人命がかかっていりゃあ警察も少しは本気で動かざるを得ねえだろうからな。もしも警察がアンタらを見捨てるようなら……この動画を世間に公表してヤツらの怠慢さを知らしめるつもりだ!」
まるで苦渋を呑み込むようにそう言った犯人たちに、誰も返す言葉を失くし、場は静まり返ってしまった。
確かに言い分は分かるし同情もするが、だからといってまったく関係のない自分たちの企業を乗っ取ったり潰したりすることが褒められるとは思えない。
先程の女性がまたも口を挟んだ。
「……ねえ、だったらどうしてアタシたちのようなまったく関係ない企業をターゲットにしたの? どうせなら……あなたたちの会社を潰したっていう張本人に復讐してやるべきじゃない……。それなのに何の関係もない、あなたたちには何もしていないアタシたちがこんな目に遭わされるなんて……それは違うと思う!」
悔しさ余ってかそう叫んだ彼女に、隣にいた別の男性が『よせ!』というように肘で突く。
「ふん! お嬢さん、アンタの言うことは尤もだ。だがな、もう後戻りはできねえんだ。アンタたちが失った生活は――今度こそ無能な警察に取り戻してもらうこった」
犯人たちはそう言うと、カメラを皆に向けて警察との交渉に取り掛かった。
18
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
禁断の祈祷室
土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。
アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。
それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。
救済のために神は神官を抱くのか。
それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。
神×神官の許された神秘的な夜の話。
※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる