極道恋事情

一園木蓮

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倒産の罠

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 同じ頃、僚一らの乗った車はいよいよ現場へと到着目前であった。
「親父、復讐ってのはどういう意味だ――。今拘束されているのは中橋らの企業を潰した当時の加害者とは何ら関係の無え――いわば被害者たちだぞ? いったい誰に向けての復讐だってんだ」
 鐘崎が父親に向かって訊く。
「復讐というのは単に俺の想像だがな。おそらくヤツらのターゲットは警察だと思われる」
「警察――? 何故警察に……」
「ヤツらは当時被害者だった者たちの集まりだ。同じ手で複数の企業を潰し、今度は犯人側となった。その自分たちを警察に逮捕させることで事件を世間に知らしめようというのではないか? と同時に、当時何の手助けもしてくれなかった警察に逆恨みを抱き、復讐を果たそうとしている――。さっきの動画でヤツらは監禁している者たちに『警察に会社を取り戻してくれと頼め』と言わせていた。もしも今回、無事に人質が解放されず爆弾で負傷者が出るような事態になれば、マスコミは騒ぎ立てるだろう。警察組織がいかに無能で薄情かということを世間に知らしめたい――それこそがヤツらの目的だと思えるんだがな」
 鐘崎も周も、他の皆も驚いたように互いを見つめ合う。
「とにかく俺たちは何としてでも拘束されている人質を無事に助け出さねばならん。今のところ割れている犯人は八人――その全員が現場にいたとして、取り押さえるのはさして問題じゃないが、ヤツらは刃物を所持している。爆弾もおそらく本物だ。その爆弾がどこに仕掛けられていて、且つ人質との距離がどのくらいあるかにもよるが、爆発すれば負傷者が出ることは免れない。最悪は死人が出る事態にもなろう」
 上手いこと地下の様子が目視できればいいのだがと僚一は言った。
「まずは潜入できる箇所を探す。何を置いても第一は人質の安全と救出だ。犯人には逃げられても構わん」
 というよりも、わざと逃がして爆弾を処理し、人質を救出する方向で取り掛かろうとのことで作戦は決まった。

 現場に着くと先に行っていた偵察部隊の捜査員らが待っていた。
「組長さん、ご苦労様です!」
「ヤツらはこの中だな?」
「おそらく――。時折階下から物音が聞こえるような気がしますんで」
「よし。潜入は我々で行う。お前さん方はひとまずここで待機してくれ」
 捜査員らに見張りを任せて一行は建物の中へと入って行った。
「地下への階段がある。解体前ならエレベーターは当然停まっているだろう。ヤツらがここから脱出するとすればこの階段を使うしかなかろう」
 足音を立てないように一階部分の各所に散らばって、地下のどの辺りから人の気配がするかを確かめる。どうやらこの一階部分はロビーだったようで、解体が決まる前は一般的な会社だったと思われる。広さ的には地方銀行の支店くらいの規模で、大企業の巨大ビルというわけではない。
 そんな中、僚一が地下へ通ずる階段の脇で壁に掛けられたまま放置されている額付きのポスターを見つけた。
「ふむ、割合しっかりしたフレームに入っているな。これを落とせば相当な音がするはずだ」
 僚一は皆を集めると、フレームを落として地下室にいる犯人をこのロビーへと誘き出すことを告げた。
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